油を引いたフライパンに肉を入れれば、ジュウと香ばしい匂いがした。
粗引き胡椒をひいて、しばらく様子を見る。
「思ったよりまともな手つきで驚いたぜ」
横で見物しながら野菜スティックを食む彼を見遣る。
「失礼だね、俺だって、男の一人暮らし独身を何年もやってきたんだ!」
「へぇ〜作ってくれる女は吐いて捨てるほどいただろうに」
胡瓜に味噌マヨネーズをつけて、ポリポリと食べる彼は小動物を思い出させた。
「何それ?やきもち?または嫉妬?英語で言うところのジェラシー?」
「お〜い、口動かす前に手を動かせ!肉が!スーパーで1000円のところを半額セールで買ってきた肉が!焦げるだろ」
急いでひっくり返せば、良い感じに焼き上がった表面に安心する。
「アハ!やっぱり俺って何やっても手際良いよね」
肉厚ステーキに大根おろしを添えてテーブルに置く。向かい合って席につくと、シズちゃんがもの問いたげに此方をみている。
「で、メインは文句無いんだが、手前ぇなんか忘れてるだろ?」
「・・・嘘、まさか・・米焚き忘れてた!?」
カパリと炊飯器を開ければ、そこは空っぽだ。
「俺も今気付いた、ごめんな」
パリパリとキャベツを頬張る彼に、溜息をつく。
「・・ごめん、うっかりしてた・・」
「別に良い、なら他のを代わりにすりゃいいだけだ」
人参スティックを持った彼に抱きつく。
「ありがとう、シズちゃん!ご飯をいつも作ってくれるからお礼したかったのに迷惑かけちゃったね・・」
「お前は毎日働いてるんだから、仕方が無いだろ?家にいる俺が作るのは当たり前だ」
笑う彼の頬にはマヨネーズがついている、俺は舌でそれを舐めとり、柔らかい感触を楽しむ。
「おい・・!噛むなよ、まさか俺を飯代わりにするんじゃねぇだろうな?」
ゴシゴシと顔を袖で擦りながら、上目使いでこちらを窺う彼の顔は赤い。
「それは食後に取っておこうかなと思ってたんだけど、意外に乗り気みたいだね?」
「バカ!食事前に変なとこ触るな!」
ソファに押し倒そうとする体を押しのける力はいつもより弱い、俺はほくそ笑んだ。
「そういえば最近俺は帰りが遅かったものね」
「広いベットが一人で使えてなかなか快適だったぜ」
お互いの額をつけ合い見つめ合えば、彼が先に小さく笑った。
「・・さみしかった?」
「ああ、一人でいると変な事ばかり考えちまう」
彼のシャツを託し上げて、鎖骨に顔を埋める。
「変らってどんなほと?」
ツツと舌を胸元へ走らせるれば、彼はブルリと身ぶるいをする。久しぶりだからなのか、反応が初々しい。
「・・言わない」
「何だよそれ?なら、言うまで弱いところずっと責めるからね!」
俺は彼の右の突起物を指で弄りながら、下着の中に手を突っ込み、性器をやわく揉みしだいた。耳の後ろをべろべろと舐めれば悲鳴が上げる。
「や、っだ!・・いきなり、そんなの・・言うから!言うから止めろ!」
「降参するの早くない?」
意地悪く笑って見せれば、捲った上着を元に戻され、真っ赤な顔でフイと横を向かれた。
「・・お前としばらくシてねぇからだろ。本当に仕事なんだか・・?」
俯いてしゃべる彼の表情は確認出来ない。
「何、まさか本当に焼きもちなの?」
「・・悪いかよ、仕事に恋人取られて面白くねぇって思ったら」
下からこちらを睨め上げる彼は、白い頬を朱に染めてボソリと低く囁く。
「ごめん・・そんなつもりで遅くなってたわけじゃないんだ」
「謝るなよ、ちゃんと解ってる・・だから言いたくなかったンだよ」
彼の体をそっと抱きしめれば、俺の腕の中へ大人しく体重を預けてくる。ギュウと抱きしめる力を強める。彼の細い体躯は硬そうに見えて、案外柔らかいんだ。
「少し痩せた?」
「愛情不足って奴じゃないか?ああ、腹へった・・」
可愛い事を言う口を塞げば、このまま食べてしまおうかなんて考えが浮かぶ。深く口付けて、口内を蹂躪すると彼は俺の舌に歯を立てた。
「・・ん!・・・・ぐっ!」
ガリと不快な音が頭蓋に響く、それは彼が俺の舌を噛んだからと理解したのは口の端に血を垂らして笑う彼を見たからだ。
「お前が足りないんだよ・・臨也・・」
俺の口内からどんどん血が溢れ、ズボンに赤い沁みを作り出す。
「・・この広い家に一人残されるはさみしい・・俺がお前を食えば永遠に一緒にいられるだろう?」
俺の首筋に舌を這わせ笑う彼は、とても嬉しそうな響きを含んでいる。
「俺の中でお前は生き続ける」


鮮血が白い壁を汚すのを仕舞いに、俺の視界は闇に落ちた。




永久機関3







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