『行き場のない手紙』

最北の地まで、この想いは届くだろうか?


旧幕府軍が蝦夷へと向かってから数ヶ月が経った。私は父の墓参りをしながら静かに時を過ごしている。

忘れられない。忘れたくない。彼への気持ち。そして皆さんから託された想い。
だけどこんなにもちっぽけな私には、一人で海を渡る力などない。

海沿いの道を歩き、行き来する船を眺める。
港を飛び交うかもめ。小さくても海を渡る姿は羨ましかった。

私にあるのは、この無力な両手だけ。
ならばいっそ、こんなもの切り落として翼を与えてくれたらいいのに。なんて意味のないことを考えた。


私は瓶に文を入れ、それを海へと流した。
届くはずなんてないけれど、この行き場をなくした想いを飼い慣らすには、これしかなかったから。


空を仰げばちらちらと白い粒が舞い降りてきた。
蝦夷はここより寒いから。また無理をして風邪でもひかれてないといいけれど……。

痛いくらいに冷たい潮風が吹き付け、私の涙を攫っていった。


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