あいつが俺に向ける気持ちには気づいていた。もちろんてめぇの想いにも。

だが、応えられるはずねぇだろ?

俺たちは京に上ったときから明日をも知れぬ生活を送ってるんだ。そんな俺が堅気の娘に、いずれここを出て行くあいつに釣り合うわけがないだろう?


だから、冷たい態度をとった。

それでもあいつはいつも俺に茶を煎れ、いろいろと手を焼いてくれた。

たく、人の気も知らねえで。



想いは膨らむばかりで、歯止めが効かなくなる。

不意にあの笑顔が見たくなって、茶を煎れてもらうという口実を考えながら俺は千鶴の部屋へと向かった。





「――…千鶴?」

幹部たちの部屋が並ぶ廊下を歩いていたときだ。ひとつの部屋の襖が開いた。そこから華奢な体が出て来る。

声を掛ければ弾かれたように千鶴は顔を上げた。


「おい、お前、何でこんなところに……」

千鶴がいたのは総司の部屋だった。

「……ひ、じかたさん…」

「………!!」

千鶴が言葉を紡ごうとしたとき雲が割れ、廊下に月光が差し込んだ。闇に覆われ隠されていた姿が露わになり、俺は思わず息を呑む。

乱れた髪や着物。ほんのりと染まる頬に僅かに潤んだ瞳。それに加えてこの場所と時間を考えれば何があったのかは明白だ。

途端に自分の醜い独占欲や嫉妬で心が満たされていく。自分の女でもないのにお門違いもいいところだともう一人の自分が嘲笑する声が聞こえた気がした。


「失礼します……!!」

千鶴はそれだけ絞り出すように言って、走り去ってしまった。呆然とした俺はその場に取り残される。

「追いかけなくていいんですか?」

再び襖が開き、総司が顔を出した。相変わらずこいつは飄々としてやがる。

「……総司、お前どういうつもりだ?」

「質問を質問で返さないでくださいよ。……で、何がですか?」

「何がってなあ、お前。千鶴はいずれここを出てどこかへ嫁ぐ。俺たちが手を出していい相手じゃねえんだよ」

それは総司に語っているようでいてその実自分へ言い聞かせていた。

「……いい加減にしてくださいよ」

「……は?」

「全く、今まで散々遊んできたくせに何に怖じ気づいてるんですか?そんなのは言い訳でしょう?千鶴ちゃんの気持ちにも、自分の気持ちにも気づいてるのにそれを無視して……。それで僕に嫉妬するくらいならさっさっと行ったらいいじゃないですか」

総司はそう吐き捨てるとぴしゃんと襖を閉めた。

「――…もう、千鶴ちゃんは僕の共犯なんかじゃないです」

微かに呟く声が聞こえたが、よく意味は分からない。


「……総司」

「何ですか?」

「すまねぇ」

「……気持ち悪いですよ、土方さん」

「うるせえ」

俺は静かにそこを立ち去った。

本当は"ありがとう"と言いたかったが、俺と総司の仲だ。俺の気持ちはしっかり汲んでくれているだろう。


さて、今度はあいつに俺の想いを届けに行くか。





「千鶴、いいか?」

部屋の灯りは落とされているものの、確かに人の気配がする。だが返事はなかった。

仕方ないのでそっと襖を開ける。中には俯き膝を抱えた千鶴がいた。

「千鶴」

呼びかけながら背に手を回したらびくんと肩が跳ねた。

「……土方さん」

顔を上げた千鶴の目元は泣きはらして赤くなっていた。俺は抱き寄せやさしく髪を梳いてやる。

千鶴は放心状態なのかその間も特に抵抗するでもなくぼんやりとした瞳で俺に身を委ねていた。

「すまなかった」

「……土方さんは何もしていません」

「いや、俺が悪いんだよ」

今度は正面から抱き締める。体温を共有することで心も溶け合えばいいと願いながら。

「……好きだ」

「……!!」

「俺はお前が好きだ。そしてお前も俺が好きなはずだ」

「……それは…」

千鶴が言いよどむが、俺は構わず続けた。

「俺やお前の立場は今は考えるな。本当の気持ちを聞かせてくれ」

「…わ、たし……でも、私はもう……」

何が言いたいかは分かってる。総司とのことを気にしてるんだろう。

「気にしねぇと言えば嘘になるが、それでも俺はお前が欲しい」

「……私………私も、土方さんが好きです!」

そう言うや否や千鶴が俺の背に腕を回しぎゅっと抱きついてきた。それを包み込むように抱き返す。




正直に言えば、やはり自分では千鶴を幸せにしてやれるか分からない。

だが、もう手遅れだ。

俺はお前を手放せそうにない。




自供



それは心に秘めた愛の囁き





fin.

推敲してないしノープラン戦法だしでこれはひどいww

あ、そういえば屯所の時点で想いを交わした話ってこれが初めてかもしれない……。

そうだよ、だからこんなにgdgdなんだよ!

………そういうことにしてください。


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