それってつまりどういう意味?




ラント兄弟
*兄さんがあほ








「ヒューバート、見てくれ! この壺、玄関に置くといいことがあるらしいぞ! うちに置こう!」

 どうにも趣味の悪い煌びやかな壺を抱えて、兄さんは満面の笑顔を僕に向ける。僕はというと、そんな兄さんにただただ顔を引き攣らせるばかり。――僕の兄さんはかなりの天然だ。というか、アホだ。よく人に騙される。露店を歩けば恰好のエサ。所謂いいカモだ。今だって、どこの誰かも知らない怪しい商人からいかにも胡散臭い壺を買わされている。幾らしたと尋ねれば、なんと一万ガルドと返ってきた。……今頃その商人はどこかへ行方を晦ませていることだろう。当然、この壺にもそんな効果あるわけがない。兄はまた、騙されたのだ。

「兄さん、いい加減にしてください」

 怒りを通り越して、最早呆れるしかない。未だ騙されたという現状を飲み込み切れていない兄さんに、僕はため息を吐いた。どんなに騙されたのだということを伝えても、兄さんはそれを受け入れない。「試してもいないのに決めつけるのはよくないだろ」なんて言って、しまいにはその壺を本当に玄関に置いたりするのだ。それだけは避けなければ。こんなゴテゴテした悪趣味な壺、あの領主邸には相応しくない。客人からの評価を下げるだけだ。それは、領主である兄さんの評価にも直結する。だが、そんなことは露とも考えないこの馬鹿兄は、今日も騙されて胡散臭い商品を買わされるのだ。

「まったく、目が離せませんね……」

 意味がわからなそうにきょとんとする兄さんにくすりと笑って、僕は兄さんの持っていた壺を奪い取った。「あっ」と声を漏らす兄さんのことなど無視して、僕は歩き出した。とりあえず、この壺は売却しよう。なんの足しにもならないだろうけど、持っているよりマシだ。それから兄さんには、一万ガルド分しっかり戦闘で働いてもらわなければ。そんなことを考えながら、僕は背後にいる兄さんに振り返った。

「仕方ないですから、僕が面倒見てやります」




それってつまりどういう意味?

(ばか!)



- - - - - - - - - -
11/4/27
11/11/9 加筆修正




Back