「ねえ、センセには好きな人いないの?」


私には好きな人がいる。お母さんが勝手に呼んだ家庭教師の紬さん。最初は「なに勝手にしてくれてるの!?」って思ったけど、今となっては感謝しかありません。こんないい人連れてきてありがとうお母さん。

凄く丁寧に分からないところを解説してくれる先生なんだけど、本職は違うらしくって、劇団員さんらしい。今度見てみたいと言ったら、「今の時期は夏組だから僕は出てないんだけど」とチケットをくれた。
早速見に行ってみれば皇天馬がいて、びっくり。あ、俳優さんがいる!って驚きじゃないよ。だって天馬ってクラスメイトなんだもん。今更あの芸能人オーラには驚かない。そうじゃなくって好きな人とクラスメイトに接点があるってところに驚いたの。

でもこれはチャンスだと思った。先生のタイプを聞き出すチャンスだと。でもそう簡単にいくわけなくて。だってあのウブな天馬だもん。恋愛ドラマ主演をいくつもやってるくせに恋バナを聞くたび顔を真っ赤にする奴だよ。天馬に先生のタイプを聞いてくれるように頼んだけど、返ってきたのは「うまくいかなかった」の文字。ですよねー


ということで、現役女子高生の私は先生のタイプを目指すために探りを自らいれているのである。


「い、いないよ」
「慌ててたけど?」
「いきなりだったから驚いちゃったんだよ」


ま、センセはあんまりこういう話には慣れてなさそうだもんね。なんて言うの?純情?


「じゃあタイプは?」
「タイプ……どうだろ、あんまり考えたことないなぁ」
「それって好きになった人がタイプってやつ?」
「そうかもしれないね」


終わった。会話が終わった。
というかタイプが好きになった人って全然分からないじゃないの。具体的に言ってもらわないと困るんですけど。せめて可愛い系なのか大人系なのか聞いておかないと。あーでももう会話終わりみたいな雰囲気になってる。ここでまた話題に出すと変だよね……変だ。どうしよどうしよう。


「なまえちゃんは?」


気がついたら先生に話しかけられた。
あれこれ考えてたら意識がどっか飛んでいってたみたい。……ん?


「私?」
「そう。好きな人とかいないの?」


まさかの先生が私に恋バナをふってくるなんて。でも多分、先生はただ静かになったこの空間をどうにかしたいだけなんだろうなぁ。もうさ、いっそのこと好きって言った方が意識してもらえるんじゃなかろうか。うん。そうしよ。今なんて視野に入れてもらえてないんだろうし。女は度胸だよ。おし。


「センセ」


気づけばか。


「なに? 分からないところあった?」


この鈍感。


「んーん、違う」

「だからセンセだよ。私の好きな人」


言ってしまった。告白するのってこんなに緊張するものだったんだね。心臓がバクバクしすぎてやばいんですけど。心の中で悪態つかないと魂どっかに行っちゃいそうなんですけど。


「前に観に行ったとき、先生と天馬が同じ劇団ってことを知って、それならって思って天馬に先生のタイプ聞いてってお願いしたんだけどさ、やっぱり超ウブな天馬くんには聞き出せなかったみたいだから、自分で聞くのが一番だよねって思ったから質問したの。でも先生がまさか聞き返してくるとは思わなくって思わず告白しちゃったよ」


おーい。私の口止まってくれ〜
そんなこと言わなくていいのに。どこまで話すんだよバカ! それよりも先生の反応見よ見よ。


「でもどうこうしたいってわけじゃないし、私は先生とこうやってお勉強してる時間が幸せだか、ら……」


先生は俯いて表情が分からない。だけど隠しきれてない耳は赤くなってて……あれれ?これって…もしかして……期待しちゃってもいいやつですか?

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