「ほら浜野!」

「ありがとうございます...あ!」


車田から投げられたドリンクは、するりと浜野の手を抜け草むらへ。


「どうした、浜野?それに、最近練習に身が入ってないぞ」

「あー...はい、すいません」

「おおかた予想はつくけどな...何かあったか?」

「............」

「浜野?」


黙り込んだと思ったら、勢いよく倉間の肩を掴んだ。


「うお!?」

「和華ちゃん不足!!です!!」


誰もが予想したであろう言葉を半泣きで叫んだ。ベンチの真ん中で。


「ああー...」

「...やっぱりか」

「だってさ!和華ちゃん大体指名されるし、やっと帰ってきたと思ったらすぐ別の時代行っちゃうし...前は俺も指名されたからいいけど、最近全然一緒にいれないんだもん...っちゅーか、何で俺和華ちゃんと一緒に指名されないわけ...?」

「もんて」

「いや、まあ、気持ちは分かるけどよ浜野?」

「お前、そろそろ和華がいない事に慣れるか和華に告るかしたらどうなんだよ」

「っむ、無理!!慣れるのも無理だけど告るのとか絶対無理!!」

「じゃあ和華とどうなりてぇんだお前は!!」


半泣きで倉間にすがりつく浜野、半ギレで浜野に怒鳴る倉間。いくら浜野の和華好きが部内に浸透しているとはいえ、これ以上先輩として醜態を晒すわけにはいかない。


「あー、は、浜野?逆に考えるんだ逆に」

「三国先輩...逆、ですか?」


さすがと言うべきか、三国がなだめに入るとスッと浜野が大人しくなる。


「ああ。今それだけ和華に会いたいって事は、帰ってきた時の嬉しさが何倍にもなるって事だろ?前向きに考えるんだ」

「前向きに...」

「そうだド!それに今の状態のまま練習を続けて、和華が帰ってくるまでに少しでも上達してなかったらどうするつもりだド?」

「!!」

「和華にかっこ悪いとこ、見られちまうかもなー?」

「っそれは...」

「それは?」


キリッと顔を上げて、目つきを変える。


「それは駄目です!!そっスね、和華ちゃんにかっこ悪いとことか見せられませんし!!」

「そうだ、その意気だ浜野」

「立ち直り早」

「よっしゃ、なんかやる気出てきた!車田先輩、練習付き合ってください!」

「おう、いいぞ!」

「俺も付き合うド!」


男三人、声をあげて練習に戻っていった。


「やる気になったみたいだな、よかった」

「悪く言えば、単純なんですよねアイツ」

「まあまあ、人をあれだけ一途に想えるのは良い事じゃないか」

「...まあ、そうですね」

「ああ」

「でも浜野じゃないですけど、和華達今頃どんな事やってんでしょうね」




「はっ...くしゅん!」

「、どうしました和華?寒いですか?」

「いや、特に...」

「どーせ浜野が和華の事言ってんじゃねーか?」

「あはは、そうかなー?」










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