※甲斐バレキスネタ






「てな感じで、結局分からなかったさぁ」


黒糖味を知るために、甲斐にキスを迫った。なんとも阿呆な行動だが、知念は心底残念そうに呟く。


「はっはは、寛と裕次郎らしいよ。...しかし、キスくらいいいだろ別に。赤の他人じゃあるまいし」

「ん、じゃあ和馬ーー」

「え?」




「えーしろー、和馬見なかったかやー?」


所変わってコート。ボールを打ち合う音が響く。


「比奈村クン?見てません」

「わんも」

「和馬ならさっき部室裏にいたさー」

「分かった、さんきゅー凛」




「和馬ー、和馬ー...あ、いた和馬ーーっ!!?」


和馬を求めぱたぱたと走ってきた甲斐の目に飛び込んできたのは、今にも唇が触れそうになっている知念と和馬の姿。


「ぬ、な、ぬ、ぬーやっとるんばぁ!!!」


あまりにも衝撃的な光景に思考が止まりそうになったが持ち直し、二人の間に割って入る。


「のぁ、裕次郎」

「何って、寛がどうしてもキスの味を知りたいって言うから」

「にしたって、ぬーで和馬と寛がキスするんばーよ!!和馬嫌じゃねーあんに!?」

「別に赤の他人でもねーし、人間なら性別とかどうでもいいし。あ、キスできるなら相手が誰でもいいとかそういうわけじゃないぞ」

「和馬は寛容すぎさぁ!!寛!!わんに断りなく和馬にキスなんかすんじゃねーらん!!」

「ぬーで裕次郎に許可とらなきゃならねーさぁ?」

「え!?ぬ、ぬーであびてぃも...」

「何でだよ裕次郎」

「っと、とにかく駄目なんさあ!!」

「「はあ...?」」




「で?」

「へ?」


先程の意味不明な行動。割って入ったり、許可なくキスするなと言ったり。


「お前が寛のキスを拒むのは分かるけど、何で俺まで強制的に拒まされるんだよ」

「え、だ...だから、それは...その、」

「んー?」

「......っわ、わんは、確かに寛のキスは拒んださー。けど、えと、あの、和馬となら...キ、ス、しても...」

「...ああ、」

「だ、だって和馬は性別関係ねーんばぁ!?な、なら、わんに、少しだけいい思いさせてほしーーっ!」


ほしい、と全て口に出す前に、唇には熱、眼前には和馬の顔。


「...これで満足かやー?」

「なっなななまききき...っ!」

「わんだってたーでもいいわけじゃねぇさあ、仲間内なら気にしない、ってだけで」

「う、ウチナーグチ...っ!」


和馬は滅多にウチナーグチを使わない。使う時は真剣な時、本心、わざと。その三つのうちのどれかだ。今の状況はまあ、真剣で本心だろうが、甲斐に分からせるためにややわざとも混じっている。


「してもいい、とはあびるけどわんからするのはしちゅん奴だけやし、勘違いしねぇでほしいさ」

「和馬っ...!」

「ん」

「しちゅん、しちゅんよ!!」

「分かってる」




「...で、和馬」

「今度は何だ」


頬を掻きながら恥ずかしそうに口を開く。


「......もう一回、してほしいさぁ...」

「はあ!?」

「わ、わんがどれだけ嬉しかったか分かってねーばぁ!?心臓止まるかと思ったさー!!こ、黒糖なんかより、ずっと...」

「あー言うな言うな恥ずかしい。まあ、ありがとう?」

「だから、もう一回...」

「嫌だ。今度は裕次郎からしろ」

「む...」

「嫌なら二度としない」

「す、する!するさあ!」


がし、とぎこちなく肩を掴む裕次郎。静かに目を閉じている和馬。二人の顔がゆっくりと近づく。波の音が響くこの場所で、二度目のキスをした。










- ナノ -