「トトロの都市伝説?」 久々に千歳のいる部活。せっかくなので前々から感じていた疑問を投げかけてみた。 「そう、トトロは子供の死神だって奴」 「もちろん。知っとるばい」 「知った上で、好きなのか」 「おう」 当たり前だ、とでも言うように頷いた。 「あそ」 「...な、和馬」 「ん?」 千歳の方を向くと、今の今まで笑みを称えていた顔を急に暗くした。いや、暗いというより不安そうな顔。 「もし、俺がメイみたいに、和馬をあせくりよって死んだら。和馬は、サツキみたいに、俺を追って死んでくれると?」 「...俺二役かよ、キツイな」 「死んでくれると?」 少しはぐらかしてみたが、こうなったら答えるまで訊き続けてくる。諦めて答えるしかない。 「嫌だね」 「え、」 「なんで千歳を追って死ななきゃいけないんだ。千歳が死んだ後、なんで俺を探して俺を置いて行ったって、死ぬまで恨み続けてやる」 その言葉を聞いた途端ぱあっと顔を明るくし、でかい図体に似合わず無邪気な幼子のように笑う。 「じゃあ、じゃあ、二人とも死んだらあの世でおもさん盛大に挙式ばあげるっちゃね」 「千歳は俺が死ぬまで、待っててくれるのかね」 「待つに決まっとるばい。何十年でも、何百年でも」 「ほう」 「死ぬまで。...俺が、和馬を待ち続ける時間ばい」 「へえ。...ん、死んだら待っててくれないのか」 「ばってん、死んだら待つ必要なか。二人ともあの世にいるっちゃね、ずっと一緒にいられるばい」 「...そう、だな」 「あの世なら、性別の壁だって関係なか」 こいつの好きな蒲公英色のように、柔らかくふにゃりと笑った。 「ん、まあ、うん」 「む、なんでそっぽ向くんね。こっち向きなっせ」 おそらく顔が赤くなっているだろう、ほんのりと頬が熱い。こんな顔見せたらまた調子に乗る。 「やだよ」 「和馬はかわいかね」 「うるせ」 そのまま向かないでいると、後ろから背中に擦り寄ってきた。本当に猫みたいな奴だ、いきなりいなくなっていきなり現れる。 その猫のような千歳を、俺は突っぱねもせずに流す。勝手に抱きついてきたり、用もないのに近づいてくるのが心地良いのだ。 あくびを一つ。千歳の体温を感じながら眼を閉じると、テニスコートに休憩の終わりを知らせる笛が響いた。 終 ←→ |