気持ち悪い。吐き気がする。悪寒がする。

そんな熱にうなされている状態で、こいつは何をしろと言うんだ。


「なあ、なあ、和馬」

「...ユウジ」

「なあ、お願いや、なあ」

「あのな」


朝起きたら熱が38度。勿論学校は休み、誰にノートを借りるか、今日の漫才は何をしたのか、はっきりしない頭でぼうっと考えていると、訪問者。家には誰もいないため重い体を起こし、玄関へ。扉を開くとユウジがいた。


「お見舞いや、感謝しい」

「あー、おう、ありがとう」


ユウジを家に上げ、適当に麦茶を出し寝る作業へ戻る。そこまではよかった、そこまでは。


「...な、和馬」

「んー...」


ユウジの方を向くと、いやに顔を赤くしもじもじと落ち着きがない。どこの乙女だ。


「ユウジ、その辺座っーー」

「抱いて」

「...は?」

「和馬の熱、感じたいん。せやから、抱いて」

「や、ちょー待て、はぁ!?」

「な、和馬...」


ここで冒頭へ戻る。

最初から、ユウジがいるのに小春がいない事を疑うべきだった。


「頼むわ、和馬」


己の腰を擦り寄せながらパジャマを脱がそうとしてくるこの阿呆。馬乗りされている上熱で力が入らない。


「そこまで言われてもな、今日は無理だ。熱感じたいとか言うなら一緒に寝るなりなんなり勝手にしとけ」

「...わかった」


残念そうな顔をしたから、やっと諦めたかと思ったら。


「勝手にするわ」

「え?」


訊き返しても応えず、脱がそうとしていた手を下にずらしズボンに手をかける。


「...え、あの、ユウジ、勝手にしろってのはそういう意味じゃ」

「一緒に寝る言うたやん」

「それも違う!」


パンツまで脱がされたら終わる。必死に抵抗していると、部屋の扉が勢いよく開いた。


「和馬ーー!お見舞い来たったで!」

「ユウ君が用事ある言うて先帰ったから一人足りんけど気にしないでねん!」


現れたのは、四天宝寺中テニス部の面々。


「和馬チョコプリン好きやろ、わざわざ買ってきてやっ...」

「頼む!一生のお願いや助けてくれんか!」

「え?」


騒ぎを中断し目に飛び込んできたのは、和馬を襲うユウジの図。


「なーなー何やっとんー?はよ中入りたいわー」

「アカンアカンアカン!金ちゃんはアカン!」

「ゆ、ゆゆユウジ何しとん!!」

「やかましいわ!!俺は和馬とセックスしたいねんはよ出てけ!!」

「金ちゃんいる前でなんちゅー事言っとるん!!」

「なー今ユウジ何言うたんー?聞こえんかったー」

「何も言っとらんばいよ」

「先輩...ホンマキモいっすわ」

「ユウ君!浮気かひどいわぁ!!」

「ちっ ちゃうねん小春!!これには訳が!!」

「んな格好のまま言うても説得力あるわけないやろ!!はよ俺の上から退けやユウジ!!」


「...哀ればい」

「千歳はん、ワシの台詞や」


確実に熱が上がってきてる、せっかくのお見舞い帰れとは言わない、静かにしてくれ。


「あーもう、寝かせてくれ頼むから!!」










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