「俺と真田ってさ」

「む?」


お互い委員会が長引き、今は廊下に二人だけ。ふいに浮かんだ疑問を投げかけてみる。


「恋人に見えんのかな」

「どうした、いきなり」

「いやそれ以前に男同士だし、見えないのは分かってんだけどさ。見た感じ、恋人...ってより、親戚とか兄弟みたいだよな」

「...それはどういう意味だ?」

「あっごめん別に真田が同い年に見えないとかそういうんじゃなくてあの行動!行動が!」

「行動...?」

「そう、行動!あんまりこ...恋人っぽい事した覚えないなー...と」

「ふむ...では」

「?」


真田の顔が す、と近づき、前髪を掻き分けた。と思ったら。


「っ!!?」


額に、柔らかい感触。


「これで満足か?」

「...っ真田、お前」


突然のキス。しかもあのお堅い真田が、校内で、だ。


「何だ」

「......ずりぃ...」


ずるずると床へ座り込む。多分耳まで真っ赤だろう、首が熱い。


「?」

「〜っ...」




「弦一郎」

「真田」

「む、どうした?」

「真田も、ああいう事するんだね?」

「.........」

「誰にも見られていないと思ったか?」

「............」


やってしまった、みたいな顔。
帽子で隠してはいるが、頬には微かに赤色が挿している。


「...見ていたのか」

「安心して、俺と柳以外は見てないから」

「十二分に面白いデータが取れたぞ」

「貴様ら...」

「まったくさ、もっと好きだとか言ったり手繋いであげればいいのに」

「なっ...!で、できるわけないだろう!」

「放課後とはいえ、廊下でキスをしていた奴の言う事か?」

「あ、れは...だな...」

「比奈村が真田の事大好きなのは知ってるだろ?」

「しかし、な...もし、拒絶されたらどうする。嫌な思いをさせたらどうする」

「比奈村が弦一郎を拒絶する確率、0%。マイナスと言ってもいい」

「ほらね」

「そ、れにしても」

「もっと比奈村に行動で示してやってくれ。部長命令」

「ゆ、幸む「さなだーー!赤也がまた」

「せっせせせ先輩!!黙っててくれるって言ったじゃないッスか!!」


「ほら、お呼びだよ」

「あ、ああ...赤也!!何をした!!」

「す、すいません!すいませんってば!」


「...まったく、もどかしいな」

「あのままじゃ、口にキスできるのはいつになる事やら」

「だな」


赤也を叱りつつも比奈村を目の端に置く真田を見ながら、幸村と柳は微笑んだ。










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