思春期狼くん
▼昔書いてた話がでてきたので再アップ。
拙いのは悪しからず。
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三限目の古典の授業をサボって私の足が向かっているのは――
「先生いるー?」
薬品の匂いが漂う中、静寂に包まれている…保健室。
「……いないか、ラッキー」
返事は愚か何一つ物音が聞こえない保健室にラッキーと呟いて中に入った。
工業ってだけあって校則は厳しくないココ山王工業。
保健の先生は言うまでもなく…甘い。
いてもいなくても変わんないけど、やっぱり寝るなら誰もいない方が寝やすいし。
……って、アレ。
カーテン閉まってるけど、誰かベッドにいたりする…?
ベッドは真っ白なカーテンに包まれていて中が見えない。
せっかく寝に来たのにココで引き返したくないあたしはそっと開けて覗いてみると、
「……あ、栄治じゃん」
そこに寝ていたのは見慣れた顔だった。
グーすかグーすか顔に似合わず下品な寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている私の恋人。
…私が来たことにまるで気付かないで夢の中ですか。
あまりにも気持ちよさそうな寝顔が可愛くて思わず栄治の頬を突いていると、小さく声をあげた後うっすら目を開けた。
「んー……名前…?」
「おはよ。何サボってんのよ」
「…眠ぃ……」
質問の答えになってないし。
寝起きで寝ぼけているのか栄治はベッドの脇に立つ私の右手を掴んで思いっきり引っ張った。
そのせいで体勢を崩した私はボフンッと何とも可愛らしくない音とともにベッドに倒れ込んだ。
両腕をがっちり腰で固定されているせいで動くことすらできない。
寝ぼけてる?と尋ねるけど寝ぼけてない…と虚ろな声で言う分かりやすい栄治の嘘に笑いそうになった。
「もうっ放してよ」
「嫌だ」
「あ、馬鹿!どこ触ってんの!」
「……最近名前不足だったからちょうどいー」
片目を開けて私の唇の場所を確認した栄治は即座にリップ音を立てて唇を落とした。
「やっぱ寝ぼけてるんでしょ」
「寝ぼけてねぇって」
「誰か入ってきたらどうすんの」
「そん時はそん時だ」
そんな無茶苦茶な……。
なんて思っている隙に栄治はクルリと体を反転させてあたしの体に跨る。
一瞬で覆われた景色の中、私の視界には栄治の顔が一杯になって映っている。
「これがバスケ部のエースなんて知られたらファンが減るよ」
「それは別にいーよ」
「こんなことしてるの河田さんにバレたらまた泣かされるよ」
「それは……マズイかも」
「じゃあ、退いて」
ココ学校だし。
まして保健室だし。
こんなところでヤるなんて絶対にい、や!
「えー…」
「えーじゃない!」
「ちょっとだけ…」
「駄目。栄治のちょっとはアテにならないから」
「……じゃあいーし」
そんな不貞腐れたって駄目なんだから。
こういう時は目を合わさなきゃ大丈夫。
ちぇっと舌打ちをして私の上から大きな体をどかす栄治。
そのままベッドに横たわってさっきと同じように私の腰に腕を回してコアラみたいに抱きついてくる。
上目遣いで私を見てから、首筋に唇を這わしチクリと痛みを残す。
「続きは日曜。……そん時に今日の分までヤってやる」
どこまでも狼な栄治。
だけどそんな栄治を好きな私も、似たようなものなのかもしれない。
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