短編集 | ナノ

初恋は叶わないっていうけれど



▼昔書いてた話がでてきたので再アップ。
拙いのは悪しからず。

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今日は珍しく彰の部活が休みの日だ。
映画を見に行く予定だったけど、雨が降っているせいで中止になり彰の家に来ていた。



「この前言ってたのこの子?」



私は週刊バスケットボールマガジンを読んでいる途中、あるページで止めた。

彰に負けず劣らずの新生ルーキーらしい。



「ん?ああ」

「へー、かっこいいね」

「なんだよ、名前はこういうのがタイプなのか」

「別にそういうわけじゃないけど。なんかモテそうな顔してるよね」



クールそうな彼の名前は、流川楓。

同じ神奈川県の湘北高校のバスケットーボール部。
キリッとした表情に雑誌からでも伝わってくる威圧感は、彰とは大違い。



「彰はバスケしてないと、ナマケモノだもん」

「ナマケモノって……」

「あ、でも、ナマケモノって魚食べるっけ?」

「食べないんじゃないか?そもそもなんで魚なんだよ」

「いつも釣りしてるし!」



彰はデートよりも釣りが好きな人間だし。
まあそれを許しちゃう私も私なんだけど。

いつも一生懸命バスケを頑張ってるから、たまには自分の好きなことしてほしいなって思っちゃうんだよね。



「でも名前が好きなのは俺でしょ?」

「うーん、まあね」

「バスケしてるとこは?」

「好き!」

「釣りしてるとこは?」

「普通」

「じゃあ、流川に嫉妬してる俺は?」



そう言って意地悪そうに微笑む彰は、私が嫌いだなんて言うはずがないことを分かってるくせにわざと聞いてくるんだ。

学校や部活ではキャラ隠してるみたいだけど、本性は根っからのドS。



「好き?」

「…好き」

「流川とどっちが好き?」

「分かってるくせに」

「んー?」



うざったいくらいに聞いてくる彼氏に普通の子だったらしつこいな!って嫌がるんだけろうけど、…なんでかな。

あんまり嫌って感じないのは、ようやく手に入れた念願の恋だからだと思う。



「彰の方が好きに決まってるでしょ。っていうか、流川くんは会ったこともないし」

「実際会ってもかっこいいよ、コイツは」

「でも、私は中学の頃からずっと彰のこと見てきたんだよ?今更他の人に靡(なび)いたりしないよ」

「名前は可愛いなぁ」

「んもう、真面目に言ってるのに!」



私は読んでいた週刊バスケットボールをパラパラとめくり、あるページで止めた。



「中学1年の時に初めてこの雑誌で見かけた時から一目惚れだもん。彰に会うためにわざわざ陵南だって勉強して入ったんだから!」



一目惚れは叶わないっていうけど――そんなことない。


開いているページに写っているのは陵南の青いユニフォームを着てゴールを決めた瞬間の彰の写真。


四年前だって今だって、この雑誌に載る彰は私の大好きな人。



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