長編:doting on love | ナノ

27 今更どうでもいいのに



「迷うんだったらやめとけよ」

「どうしたの?急に」

「買い物と同じだよ。迷ったら買うな、っていうだろ」

「確かに結婚は高い買い物だよね。自分の人生を賭けてるんだもん」

「わかってるならいいけどさ」

「…越野って相変わらずだね」

「相変わらずお節介って言いたいのか?」

「あはは、違うよ。相変わらず優しいってこと」


高校の時と変わらず優しい越野。

私と彰が喧嘩するたびに仲裁してくれてたっけ。


「越野はさ、良いパパになりそうだよね」

「そうか?名字は教育ママになりそうだな」

「そうかな?」

「まあ仙道があんな感じだからちょうど――…悪い」


越野は口が滑ったと言わんばかりにバツが悪そうな顔をする。


悪気はなかったんだと思う。

もし今目の前でしてる“申し訳ない”って顔が演技なのだとしたら、俳優にですらなれると思う。


「……」

「なあ、名字。本当に仙道から何にも聞いてないのか?」

「…何にもって?」

「あの日キスした相手とか、その理由とか」

「聞いてないよ」


グラスに残ったビールを一気に飲み干し、近くにいた店員を呼んだ。


「越野もビールでいい?」

「ああ、サンキュ」


ビールのお代わりを注文し、大好きなチーズをつまむ。


越野が何を話したいのかは分かる。

でも、目的がわからない。

さっきから何で今更あの頃の話をするのか。

何で今更彰との話をするのか。


もう過去のことなのに、今更“現在(いま)”と結びつけないでほしいのに。




 戻る 次

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -