長編:doting on love | ナノ

20 犯した罪と幸福



「…ここ、会社」

「ん」

「もし誰か来たら、」

「こないよ」

「…私、彼氏いるって言った」

「ん」

「牧さんが、」

「他の男の名前は呼ばないで」



牧さんとは違う、いやらしいキス。

もっと、もっと、って。

…まるでキスが喋ってるみたいに。


「かわいい」

「んっ…」

「何でそんなにかわいいの?」

「…あっ」

「何で名前さんはそんなにかわいいの?」


牧さんとは違う。

違う人間なんだから、当たり前なんだけど。

でも、この違和感が何なのかは――わからない。


「名前さんは何も悪くない」

「…私のせいだよ」

「全部、俺のせいにして」

「…え?」

「このキスも、この行為も、全部俺のせいにして」

「……」

「名前さんは何も悪くない。全部俺が悪い」

「……」

「だから――」


そんな顔で見ないで。

そんな色っぽい顔で、私を見ないで。


「牧さんでもなく、他の男でもなく、」

「……」

「――俺を感じて」


その言葉とともに重なった二つの身体。

何度も何度も同時に迎えた絶頂の瞬間。


荒い吐息とデスクが揺れる音だけが、静かなオフィス内にしばらく木霊(こだま)していたのだった。




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