ビーティング・キング | ナノ
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湘北高校の体育館にはすでにかなりのギャラリーが出来上がっていた。
ようやくスペースを見つけて腰を据えた時にはすでに湘北と海南の選手がコートにしているところだった。
すごく目立つ赤い髪の子が「天才ですから!」と声を張り上げてなぜか威張っていて、その子をアヤコちゃんがハリセンで引っ叩いていた。



「おっ、花道が早速一発食らってるぜ!」

「見ろよ、まーた野猿とジイに突っかかってやがる!」

「けっけっけ、今日も面白い試合見せてくれよ〜」



そばに立っていた四人組の男の子達が赤い髪の子を見ながらゲラゲラ笑っている……けど、なんかガラが悪そう。

ジャンプボールのために向かい合う高砂くんと相手の4番。
それを囲むようにスタンバイしている武藤くん、神くん、清田くん。
……それに、牧くん。
彼のプレーを見るのは、前にちょっとだけ見た部活以来のことだ。

牧くんを中心に試合が動く。
ゲームメイキングをしているの彼はコート全体を見渡しながら、素早いパスとスムーズなボール運びを繰り返す。



「さすがジイ、やっぱうめーなあ!」

「顔はあんなんでも、さすが神奈川ナンバーワンプレーヤーだぜ!」



神奈川ナンバーワンプレーヤーって牧くんのことじゃなかったっけ……?
あれ、でも、ジイって呼んでるのはなんだろう……?


神くんが外から打ったボールがリングに当たって落ちると、牧くんが相手の4番を差し置いてボールを奪った。
そこから武藤くんにボールが渡った速攻攻撃から、清田くんがフィニッシュを飾る。



「くぅ〜野猿のやつ、やっぱ口だけじゃねぇ!」

「王者海南は強ぇーな!」



ここが湘北高校だということにもかかわらず海南のプレーに対する賞賛が多いような気がする。
特に牧くんに対する周りからの評価はこれ以上ないくらい高い。

ダンクをかまそうとする相手の10番と11番の選手を次々にはたき落とす。
存在感と威圧感はコート上で誰よりも大きかった。

……すごい。
目が離せない。
ゴールが決まりそうなシーンでも、ゴールを断固として守り続ける牧くん。
それに加えて抜群のセンスのゲームコントロール。
神奈川県ナンバーワンプレーヤーって呼ばれているのもこれなら頷ける。

キラキラしてかっこいいな。
すごく楽しそうにプレーしていて生き生きしている。
みんなが好きになっちゃうのもしょうがないよね……こんなにかっこいいんだもん。
牧くんに好きになってもらえる子は幸せだな、きっと。

……って、また暗くなってるし。
今日を目に焼き付けて、私は牧くんから卒業するんだから!


ピピーッ


審判が長く響き渡る笛を吹いた。
試合は80-72でウチが勝利した。
牧くんが嬉しそうに高砂くんや武藤くんたちと笑ってる姿に私も嬉しくなる。

……さて、と。
それじゃあ、私はここら辺で……みんなにバレる前に帰ろうかな。

その場を立ち去ろうとしたまさにその瞬間――



「名前さーんっ!!!」



……アヤコちゃん!?
ちょ、ちょ、ちょっと!
声が大きすぎるよっ!
そんなに大きな声で叫んだら牧くんにバレちゃう!!!

と、危惧したのもすでに遅し。

コートの上にいる牧くんとバッチリと目が合ってしまった。 prev / next

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