ビーティング・キング | ナノ
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「ここ来る時にすれ違った女子集団じゃねーか?」



高砂くんの言葉に武藤くんが妙に納得したような相槌を打つ。



「そうなのか?」

「……ちがう」

「そうなんだな」

「……ちがう」

「苗字諦めろ。お前、すっごい嘘つくの下手クソだぞ」



……そうだった。
自分で嘘つくの下手なこと、忘れてた。



「牧ともなんかあったのか?」

「……ない」

「あったんだな」



知ってるんだったら聞く意味ないじゃん!
武藤くんと話すの今日が初めてなのに、なんなのもう!
高砂くんも、二人とも……なんなのよ!



「……なんで、」

「……」

「なんでバスケ部はみんな、そうなの?」

「どういう意味だ?」

「神くんも……清田くんも……武藤くんも、高砂くんも、」

「……」

「バスケ部はみんな口を開けば『牧くん、牧くん』って……なんで私の前で牧くんの話ばっかりするのよ……っ!」



私が言ってることって超むちゃくちゃ。
まーた八つ当たり。
子供みたいに文句言い散らしてるだけの最悪な女だ、絶対。



「私は牧くんの友達でもなんでもないのにっ」

「……」

「牧くんはみんなの憧れで、私みたいなのには不釣り合いなんだからっ」

「……」

「ううー……っ」



一気に溢れてきた言葉を吐き捨てた。
それなのに二人とも黙って耳を傾けてくれる。

……バスケ部はなんでみんな、揃いも揃ってこんなに優しいのよっ……!



「苗字、落ち着け」

「言われなくたってわかってるよっ」

「!?」

「もう二度と関わるな、なんて言われなくたってもう昨日さよならしたんだからっ!!!」

「……」

「……そんなの、わかってるんだから……っ!」



その日から、私と牧くんの関係はたった数日前と同じ関係に戻った。
用事があったら喋るけど、それ以外は喋らない。

――唯一変わったこと。

それは、一番後ろの席から窓際の前から二番目に座る彼の姿を眺めなくなったってこと。
見てると辛くなっちゃうから、できるだけ見ないようにした。

自分で選んだけれど、私達の関係は本当に友達以下の関係に戻ってしまった。 prev / next

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