ビーティング・キング | ナノ
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気にするな、って言われても気になる……
でも牧くんがそう言うなら気にしないことにしよう。

コートでゴールの練習をする牧くんを見れるチャンスなんだから!
余計なことは考えないで焼けつけておこう!
今日が最初で最後かもしれないし。
こんな風に牧くんと話せてることが、明日になったら夢みたいに消えちゃうのかもしれないしね。
それでも今がこんなに幸せだからいいんだ。


顧問の高頭先生の合図で練習が終わりになると、部員達は続々と戻ってくる。
その中には牧くんも、それからさっきの2人組もいて。
失礼なやんちゃっ子の方は、また牧くんにゲンコツをお見舞いされているところだった。

一日で2回も牧くんがゲンコツしてるとこ見ちゃった……!



「お疲れ様です」

「あ、お、お疲れ様、です」



私の視線の先に気づいた神くんはクスリと笑みをこぼす。



「ノブのやつ、また牧さんに怒られてるや」

「……よくあるの?」

「決して珍しいことではないですよ」

「へぇ……意外……」

「意外ですか?」

「うん。牧くんって優しくて温厚な人じゃない?クラスで誰かのことゲンコツしてるのは見たことないから、その、意外……かな」

「愛あるゲンコツですよ。それに牧さんのアレはいつもノブに原因がある時ですから」

「何かやらかしたの?」

「え?ああ、まあ、今日のは確実にノブが悪いですよ」

「……そうなんだ」

「牧さんの前で苗字先輩のことを口説こうとしたりするから」



口説こうとね、
口説こうと、
私を口説こうと……

……え!?
私口説かれたっけ!?



「お疲れ」

「お、お、おつかれ、さま……です」

「着替えてくるから校門で待っててくれるか?」

「は、はい!」



ビックリしたぁ……!
神くんに聞き返そうとしたのに牧くんと一緒に行っちゃったし。

……とりあえず言われたとおり、校門で待ってよう。
はー、緊張する。 prev / next

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