Secret Kiss | ナノ
▼ シークレットキス
もう一度フリースローラインに立つ。
ボールを何度かついて呼吸を整える。


ダムッダムッダムッ


こんなに緊張しているのは久しぶりかもしれない。
試合の時だってこんなに緊張しないんだ。



「賭け、しません?」

「……賭け?」

「ボールを入れられるか」

「そんなの、ズルイ」



多分名前さんは、ただ普通にここから打ってゴールすればいいと思っているのだろう。
さすがにそれじゃあ簡単すぎるから面白くない。

だから、



「俺はここから目を瞑って打つ」

「え?できるの?」

「さあ?やったことないからわかんないっす」

「さすがにそれは……」

「難しい方が賭けとしては面白いから」



勝つ自信?
あるよ。

その代わり賭けのご褒美は、それ相応のものでないと。



「それで……何を賭けるの?」

「先輩」

「……え?」

「俺がゴール決めたら、先輩からキスして」

「そ、そんなのできないよ!私、稔と付き合ってるんだよ!?」

「知ってるよ。でも、欲しくなった」

「……」

「好きな人からのキスがどんなものなのか」



静かに瞼を下ろす。
ボールを地面に何度かつき続ける。

アーチを描くように、ゆっくりとボールが手から離れていく感触がした。


――俺だって、手に入れられないものくらいある。
せめて名前さん自身が俺のものにならないなら。
名前さんの一部だけでもいいから――欲しくなった。


ザシュッ


ボールがゴールに入った音がした。






「……稔には内緒にしてね」



最初で最後のキス。
俺と名前さんだけの――シークレットキス。 prev / next

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