▼ 告白なんてムリ
「いますよ」「へえ、好きな子いるんだ!どんな子?」
「綺麗な人」
「うーん、誰だろ?ゆっこちゃんかな?それともあいちゃん?みなみちゃんかなあ?」
「全部ハズレ」
「告白はしないの?」
「その人、彼氏持ちだから」
「そっかあ……それは難しいね」
「……先輩だったら、どうします?」
「んー?」
「松本さんと付き合ってる時に告白されたら、断る?」
断るよな、普通。
なんつー質問をしてるんだ俺は。
やっぱいいです、と訂正しようと口を開きかけた瞬間返ってきた返事にボールをバウンドする手が再び止まった。
「稔より好きな人だったら付き合うよ」
「松本さんより、好きな人?」
「いたら、の話だけど。仮定の話」
「へー、断るって即答するかと思った」
「そりゃいまは稔が好きだけどね。この先ずっとそうとは限らないよ」
「……」
「”絶対”なんてことはこの世にはないから」
「堂本監督も同じこと言ってた……」
「ふふ、『勝負の世界に”絶対”は存在しない』って?」
「そー」
「あーあ、監督からの受け売りだってバレちゃった」
ペロッと舌を出す行為すら様になっていてかわいい。
……なんでこの人はこんなにかわいいんだろう。
「でも沢北くんに告白されて断る子なんて早々いないんじゃない?」
「その人は無理っす」
「どうして?」
「彼氏のことが大好きな人だから」
「うーん、そっかあ」
「苗字先輩が松本先輩のこと好きなのと同じくらい」
「それは大変だ」
そう、この恋も大変なんですよ。 prev / next