それでもそばに | ナノ
▼ 旅立ちは突然に
三年記念日の今日、彼は突然言ったのだ。
――バスケがもっと上手くなりたい。だからアメリカに行く、と。



「名前さん、」

「うん」

「怒ってる……?」

「怒ってないよ」

「じゃあ、」

「なに」

「……別れたい?」



別れ……、か。

……わからない。
正直言ってよくわからない。

だって、たった今だよ?
アメリカに行くから、って宣言されたの。
実感湧かないし、そうだなんだって、そんな質素な感想しか思い浮かばないよ。



「栄治はバスケが好きだもんね、昔から」

「……ん」

「バスケのためだったらなんだってするよね」

「……ん」

「一年記念日は試合があって疲れたからって終わっちゃって、二年記念日はアメリカ遠征」

「……」

「三年記念日の今日は、アメリカに行くって言ってる」

「……」

「ねぇ、栄治」

「……」

「バスケと私、どっちが好き?」

「名前さん……、」

「……なんて、愚問かな」



意地悪だな、私。
答えをわかってて聞いてるんだもん。
すごく意地悪だ。



「最後に一つ、お願い聞いてくれる?」



だってね、……栄治の顔見てたらさっきの質問の答えなんて一瞬で分かっちゃったんだよ。 prev / next

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