君がほしい | ナノ
▼ インタビュー
「――では、以上になります」



文字でいっぱいになったインタビュー用のノートをパタンと閉じる。
約一時間のインタビューが何事もなく無事に終了したところだった。

私の言葉に目の前の椅子に座っていた沢北さんもうんっと背伸びをしてみせる。



「疲れました?」

「実は……ちょっと」



そう言った沢北さんは少し恥ずかしそうだった。
はに噛む、というか少し気まずそうな感じで。

確か牧さんは、沢北さんは昨日の便で帰国する予定だと言っていた。
ってことはまだジェットラグが残っているのかも?

そう思ったのも束の間、私の勘は微妙に外れていた。



「こういうの慣れないんですよ」

「……インタビューですか?」

「そう」

「意外です。よく雑誌にも載っているから慣れているのかと思ってました」

「普段は写真が多いから」



だから引き受けるんですけどね、と沢北さんは続ける。

どうやらインタビューはあんまり好きじゃない様子。
だからいつもは撮影のみのオファーが多いんだとか。



「なら尚更今回のインタビューは貴重なので感謝します」

「俺の受け答え大丈夫でした?」

「ええ、バッチリでしたよ」

「よかったー。牧さんにこの仕事を頼まれた時、会社で一番優しい女性を付けてくださいってお願いしておいて正解だったな」

「ええっ!そうだったんですか?」

「そうだよ。そしたら『俺の一番信頼している部下が担当をする』って牧さんが言うんで引き受けたらそれが苗字さんだったってわけ」

「それは……光栄ですね」

「さっきのアレはさすがにビックリしたけど」



さっきの’アレ’。

沢北さんが笑っている理由はすぐに思い付いた。
きっとインタビュー前にスタジオで彼と流川くんを間違えた時のことだと思う。
……っていうか、そうに違いない。
わざとらしく小さく咳払いをしてみると彼はようやく笑うのを止めてくれたところだった。



「先ほどは大変失礼しました」

「全然いいですよ。ただ、……ぷっ」

「……」

「あの時の苗字さんの表情、結構やばかったなぁと思って」

「……」



うう……失態。
だってまさかスタジオに沢北さんがいるなんて知らなかったし。
あの時は流川くんのおふざけが悪かったというかなんというか。
……何を言っても言い訳になってしまうのだけれど。

タジタジになる私を見ながら沢北さんは再び「苗字さんは面白いなぁ」と笑うのだった。 prev / next

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