君がほしい | ナノ
▼ お誘い
その日、牧部長に呼ばれていた私は部長室を訪れていた。
ノックをして返事を確認してから中へ入ると、デスクに座って資料に目を通していた部長が顔を上げる。
普段はかけていない眼鏡を外して、こっちへ来い、と促す。



「すみません、タイミング悪かったですか?」

「いや、ちょうど休憩しようと思っていたから大丈夫だ」

「コーヒーでも淹れましょうか?」

「ああ、頼む」



部屋に備え付けてある専用のコーヒーマシーン。
さすが、平社員の私とは待遇が違うなぁ。



「あっ」

「どうした?」

「牧部長はケーキとか甘いものは好きですか?」

「嫌いではないが」



コーヒーが入るまでの間、ちょっと待ってて下さい!と慌てて部屋を出て自分のデスクに戻ってある物をとってから再び部長室に戻ってくる。
急いでいて息切れしながら戻ってきたらものすごく心配されてしまった。

手にしていた箱を開けて形の崩れていないソレを取り出してみた。



「このケーキ、流川くんがくれたんです」

「流川が?」

「そうなんですよ。女の子にもらったみたいなんですけど、甘いものは嫌いだからって」

「クックッ、アイツらしいな」

「一人で二個も食べれないからよかったら一緒にどうですか?」

「では、お言葉に甘えてもらおうか」

「ぜひ!」



コーヒーと合わせてケーキも机の上に並べて、向かい合って座った。
コーヒーはブラック派の部長とミルクのみ派の私達。
仕事中にもかかわらず、やけに優雅なティータイムが疲れを癒してくれる。



「それにしても、苗字はやけに気に入られたな」

「なにがです?」

「流川がそんなことするなんて多分、相当珍しいぞ」

「どうなんでしょうね。彼の場合はなにも考えてないと思いますけど……」

「アイツの性格もよく分ってるじゃないか」



牧部長はおかしそうに笑う。



「苦労させられてますから……」

「選手としては申し分ないんだが、人間性がな」

「ふふ、牧部長もそう思うんですね」

「本人には内緒にしてくれ」



牧部長にまで問題視されてる流川くんがどれだけやばいのかはお分かりいただけただろう。
彼のせいで白髪でも生えたかな……? prev / next

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