▼ 違う味
なんとなくここ数年は特定の彼氏を作っていなかった。特別モテるわけではないけれど特別モテないわけでもない至って標準の女だ、私は。
だから別に相手に困っているってほどでもなかった。
彼氏がいなくてもしれなりにするべきことはしているし。
具体的な例が、仙道くんなわけなんだけど。
仙道くんは、いつも焦らすようにゆっくり時間をかけて私を甚振(いたぶ)る。
私が自分から彼を求めるようにし向けてくるんだ。
我慢しきれなくて、ちょうだいって言うとようやく与えられる快楽。
もう何度も経験しているせいか、方程式みたいに頭の中にインプットされている。
……でも、
でも、この彼は……違う。
キッチンに手を突いて寿が立っている向きと逆に向かされる。
後ろから囁かれる声にゾクゾクした感覚が走る。
「なぁ、」
「……」
「挿れていいか?」
履いていたスカートは腰の位置まで捲りあげられ、お尻は大胆に露わになっている。
撫でたり、摩ったり、叩いたり……それぞれの感度を試すように泳ぎ続ける手。
もう片方の手は後ろから伸びてきて胸を揉んでくる。
「やっ……」
「それで嫌がってるつもりか?」
「あっ、」
「ココ、感じんのか」
少し強くつままれた箇所に思わず声が漏れた。
「仙道とヤってる時はどんな感じなんだよ」
「どんな、……って、」
「アイツはこういうことするか?」
胸を揉んでいた手を引っ込め、私の下半身に忍ばせる。
もう濡れたそこに、寿は許可なく無理やり自分のモノを挿れてきた。
いやらしい水音とお互いの喘ぎ声が部屋に響き渡る。
仙道くんは……こんな風に突然挿れてきたりしない!
もっと前戯して、時間をかけて、
「あっ……!!!」
一番奥まで伝わる熱いものに声が我慢できない。
寿が嬉しそうに笑っている表情が想像できちゃう私って……
彼は典型的なエスっけに溢れたセックスをする。
動き方とかピストンの回数とか、全然違う、仙道くんとは。
でもこれはこれでいい、って感じてる私はただの変態なんだろうか。
「名前ん中、やべぇ」
「……ん、っ」
「仙道にはもったいねぇな、こんないい身体」
「あっ、」
「ソソるな、イイ顔してやがる」
後ろから自分の方に顔を向かせ、キスをしてくる。
いつもとは違った快楽に溺れながら慣れない寿とのキスを味わう。
ほのかにする煮物の味も、回数を重ねるごとに徐々に消えていった。
狭い部屋に響く二つの喘ぎ声。
シンクに爪を立てている音。
激しさを表す身体のぶつかり合う音。
――今日はいつもと違う。 prev / next