君がほしい | ナノ
▼ 月刊バスケットボール
今月の月刊バスケットボール誌が発売してから一週間。
うなぎ登りで伸びていく販売数。
読者から寄せられる問い合わせ。
どれをとっても売れ行きは過去最高だった。

今までの月刊バスケットボールも目標数以上、毎月売り上げてきた。
でも今月がすごすぎるのだ。
うちの会社の二大広告塔――仙道・流川コンビ。
ルックスもいいし、バスケの経歴も文句無し。
それぞれが所属しているチームも国内リーグを順当に勝ち進んでいる。

今一番注目の若手コンビといっても過言ではない。
それはバスケットボール選手としてに置いてだけではない。
他のスポーツや他のエンターテイメントの話題と比べても、ずば抜けて注目度が高いことは間違いなしだ。

おかげで上層部は上機嫌。
目の前に座っている牧部長も、



「それにしても、今月がはすごいな」



ものすっごく嬉しそう。
それもそうだ。
この二人を抜擢したのは他の誰でもない、部長本人なのだから。

絶対に契約不可能だ――といわれ続けたけど諦めずにチームにかけあい、直談判もしたらしい。
高校時代の好ってことも含めて、二人とも二つ返事でオーケーしてくれたらしいけどね。
要は牧部長だからできたってこと。
他の人だったら彼らと契約するなんて、まさに不可能だったに違いない。



「さすがですね!」

「苗字の活躍も大きいぞ」

「私なんて、そんな、」

「いや、成功の一つはなんといっても二人のインタビュー記事だ。中でも流川の記事に対しての反響は大きい」

「読者の皆さんは仙道くんより流川くんの方がいいんでしょうか?」

「そうじゃないさ、イメージの問題だ」

「イメージですか?」

「流川は今までインタビューや独占記事を受けたことがないからこそ、今回うちで取り上げたことが大きな話題に繋がったんだ」

「なるほど」

「例えば仙道が無口で無愛想な選手だったら同じような結果になっていたさ」



ふむ。
そういう意味ではこの二人のバランスはいいんだろう。
さすが牧部長。
先のことまで見越した取り組み、勉強になるなぁ。



「この二人、いいバランスですね」

「ああ、選手としてもライバル同士だしな」

「確かに」

「所属チームも次の試合勝ち抜けば決勝で当たるだろ。そういう意味でも注目度が高い」

「そうですね」

「まあ、面白いくらい高校の頃からあの二人の関係は変わってないけどな」



まただ。
高校時代を懐かしむ口ぶり。
その表情は、バスケに未練があるように見えてしまうのは……気のせい?

なんともいえないもやもやした感情。
私が抱えてもしょうがないってわかってるのに、聞かずにはいられなかった。



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