▼
「せ、せんどうくんっ」「ん?」
「こ、ここ、会社!の、廊下!」
「そうだね」
「こんなところでダメだよっ」
「まだ何にもしてないよ」
「じゃあ、何でこんなに近いの?」
「名前さんの顔がよく見たいから」
「……」
「ついでにキスもしたいから、かな」
仙道くんは周りの様子を気にすることなく口付ける。
「牧さんに触れさせた罰と、」
「んっ……」
「流川のことを考えてた罰」
「……あっ、」
「お仕置き」
首筋にザラリとした舌が這う。
身体にゾクゾクとした感覚が走った。
思わずユニフォーム裾ををキュッと握ると、仙道くんは満足そうに口角を上げて微笑んだ。
「今日は20時には終わるから」
「……」
「夕飯はうちで一緒に食べよう」
「……」
「ロールキャベツが食べたいな」
「……」
「いい?名前さん」
「……うん」
先にスタジオに戻っていく仙道くんの背中を見つめていた。
いつ誰に見られているかわからないスリル。
彼との行為全てに抱く快楽。
……いつになったら抜け出せるんだろう。
ううん、一生抜け出せないかもしれない。
絶対にノーとは言えない彼の無言の威圧感。
笑っているけど笑っていない瞳。
人一倍独占欲の強い、仙道くん。
「キャベツとひき肉、買って帰らなきゃ……」
彼のリクエストのロールキャベツを作るために。
……この前も作ったけど。
私たちのイケナイ関係。
イケナイ秘め事。
――絶対に、誰にもバレちゃいけない。 prev / next