君がほしい | ナノ
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「でも、すごく興味深いインタビューで楽しかったです」

「ん?」

「生まれてすぐにバスケットボールを触った話は沢北さんのことを知る上では有名な話でしたけど、バスケが上手すぎるが故に虐められていたことがあったり、学校選択を迷ったり。沢北さんの人間らしい部分を知れたというか……気分を害すような言い方だったらすみません」



小学校、中学校、高校、プロ……

バスケを始めた頃から常にトップを、最先端を走り続けてきた日本人唯一の選手。
それが――沢北栄治。
彼に憧れてバスケを始める者も多い。
良い面、ポジティブな面はあらゆるメディアを通じて多く語られてきた。
そしてファンやバスケに興味ない人であってもそんな彼自身に興味を抱く人も少なくはなかったはずだ。

だからこそ、今日初めて語られた彼のネガティブな面をによって天才故の苦労を初めて垣間見えた気がしたのだ。
きっとそれはこの月刊バスケットボールを手にとってくれる読者さんにも伝わるはず。

思わず感慨深く感想を一気に述べてしまう。
それを聞いた沢北さんは一瞬驚いた表情を浮かべた後、



「自分のことを語るのはあんまり好きじゃないんだ」

「はい」

「だからどのインタビューでもいつも同じ答えなんだけど、」

「……」

「今日は違ったな」

「え?」

「苗字さんと話してたら、もっと自分を知って欲しいって思ったよ。いやらしい意味じゃなく単純に」



私に……知ってほしい?
沢北さんのことを?

今度は私が驚いた表情を浮かべているはずだ。



「って俺!!!」

「!?」

「きもい!」



なぜか突然がっかりと肩を落とす沢北さん。
一喜一憂する表情にクスリと笑みがこぼれた。



「今の発言ってセクハラとか言われちゃう?」

「ふふ、言われないですよ」

「よかったー。初対面で嫌われたら悲しすぎるし、それに、」

「それに?」

「苗字さんとはもっと仲良くなってみたいから」

「あの……?」

「さっきのインタビューで言ったとおり」



不敵に微笑んだ沢北さんは先に部屋を出て行った。

閉じたノートをゆっくりと開いてみる。
ギッシリと文字の詰まったそれぞれのページ。
バスケのこと、プライベートのこと、それから……

読み進めているうちにあるページで目が止まった。 prev / next

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