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「誰とデート?」「仙道くんには関係ない」
「なんで?名前さんは俺のものだって言わなかった?」
「自分のことを棚に上げてよく言うね」
彰、なんて名前で呼ばせて。
頭まで撫でてあげて。
仲良く腕なんて組んで歩いちゃってさ。
それなのに私に文句を付けるってどうなの?
自分勝手にも程が有るんじゃないの?
仙道くんの言葉に更にイライラが募っていく。
「ヤキモチ?」
「違うから」
「じゃあ何でそんなに怒ってるの?」
「怒ってないってば」
「怒ってるよ。俺にはわかる」
何がおかしいの?
その笑顔は私をバカにしてるってこと?
もうほんっとやだ。
……どっか行ってよ。
「彼女待ってるんだからいいから行きなよ」
「……」
「早く行って」
「名前さん、」
「もう早く行ってよっ!!!」
思わず声を荒げてしまった。
ハッと気づいた時にはすでに遅し。
周りのお客さんの視線も全てがこちらに向けられた後だった。
「……」
「名前さんさ、いまイライラしてるでしょ?」
「……」
「すっげー怒ってるって顔してる」
「……」
「それをヤキモチっていうんだよ」
「……」
「かわいい」
牧さんに『かわいい』と言われた時とは天と地ほどの差がある。
仙道くんの『かわいい』はいつだって何の意味もない。
私をバカにして面白がるための、ただの言葉材料にしか過ぎないんだから。
「あの子よりも名前さんの方がかわいいよ」
「……」
「俺が本当に好きなのは――」
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