君がほしい | ナノ
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何よりこんなに大きな仕事を私なんかに任せるといってくれている牧部長の期待に応えたい。
入社してからずっと面倒をみてもらって、いろんなことを教えてきてもらった。
牧部長に自分のしてきた努力と身につけた努力を証明するには有り難すぎる仕事だ。

ぜひやらせてくださいっ!、と勢いよく頭を下げると同時に届く笑い声。
それでこそ苗字だ、と牧部長は私の反応がわかっていたように嬉しそうに呟いた。



「詳しい日程や内容については、俺が直接沢北と連絡を取り合うから心配しなくていい」

「わかりました」

「期待してるからな」

「……それ、わざとプレッシャーかけてます?」

「クックッ、」

「もう、部長っ!」

「わるいわるい。つい、な」

「絶対成功させてみせます!目指せ先月号!」

「そのいきだ、頑張れよ」



自分のことのように心配し、喜んでくれる牧部長。
そんな彼に対する感謝は言葉では言い表せない。
この仕事で絶対証明して見せよう!と強く心に刻んだ。



「そうだ苗字、」

「はい?」

「今夜予定はあるか?」



……今夜?
これってもしかして……!



「実は友人にもらったレストランでの食事券が余ってるんだ。よかったらどうだ?」



デート……!?
いや、でも、余りものの食事券……

……いやいや、つべこべ言わない!
一生で一度かもしれないし、こんなにラッキーなお誘い。



「あ、空いてますっ」

「そうか。じゃあ仕事が終わったら連絡する」



うっそぉ!
牧部長と食事なんて夢みたい……
とりあえず今日の私服が変な服じゃないことだけを切に祈ろう……

慌てて返事をする私をみてまた牧部長はおかしそうに笑っていた。
なにがそんなにツボなのかはわからないけど、私の行動の一つ一つがおかしいらしい。



そのあとの仕事は言うまでもなくあっという間に終わった。
部長から連絡が来たのは仕事が終わってから30分も経たないうちで。

メールに指定されていた駐車場には、高そうな高級車に乗っている牧部長の姿があった。 prev / next

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