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インタビューの途中で、流川くんが不意に振り返って手招きをする。何かあったのかと思ってそばに駆け寄ると、インタビュアーさんの困った顔がある。
「どうかしましたか?」
「ええ、それがね――」
インタビュアーさんが言いかけた時、言葉を遮って流川くんが先に声を発した。
「このインタビュー、本当に必要か」
「え?」
「試合に関係ないこと聞いてどうすんだ」
「……っていうと?」
「女のタイプとか、恋人がいるかとか」
「……」
「んなもん、必要ねーだろ」
あからさまに嫌そうな顔をする流川くん。
……と、バツが悪そうな表情を浮かべるインタビュアーの女の人。
先にもらってた紙には確かにそんな質問は表記されていなかったはずだ。
となると、この人の個人的な質問ってところだろう。
……はぁ、困るなぁ。
「今回は試合についてのインタビューのはずです。個人的な質問は控えて下さい」
「……申し訳ありません」
「試合のインタビューは終わりましたか?」
「は、はい」
「では、これで終わりということで」
頭を下げて去って行くインタビュアーさんを気遣うそぶりもなく、「気分わりー」と流川くんは文句を言う。
彼の性格的に……というか、誰だって嫌か。
「流川くん、ごめんね?」
「なんで名前サンが謝るんだ」
「そばにいたのに気付くのが遅くて、嫌な思いさせちゃったでしょ?」
「しかたない」
「次はこういうことがないようにするから」
「……メシ」
「え?」
「腹減ったから、続きは昼飯食いながらで」
せっかく人が謝ってるのにメシ、って……
しかも私がご馳走することになってるし。
はぁっとわざとらしく吐いたため息は先を歩く流川くんの背中には届かない。
……不思議というか、気ままというか。
これで憎めないんだから本当困っちゃう。 prev / next