君がほしい | ナノ
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そうだそうだ、と思い出したように買い物袋を漁った挙句、



「煮物の作り方教えてくんねぇ?」



突拍子もないことを言い出した。
顔に似合わず、煮物!?ってのは心の中だけでしまっておく。

話によれば週末にお母さんが家に来るらしく、その時に煮物を作ってあげたいんだとか。
昔は悪さして迷惑かけたから、少しずつこういう場面で親孝行していきたいって耳を疑うような発言までしていた。



「料理できるの?」

「カレーとか炒めもんならな。煮物みたいに手凝ってるもんなんて作ったことねぇ」



だったらできるものにすればいいのに、って言ったら実は電話で料理をしてるのか?って質問に、余裕でしてる!って見栄はったらこういうことになったらしい。



「じゃあ、とりあえずダシから、」

「おう」



「人参はこうやって切れ込み入れてあげるとかわいくなるよ」

「俺がやったら気持ち悪りぃ」



「日本食の三大調味料は?」

「……」

「醤油・砂糖・みりん、です」

「おう」



寿は意外に真面目に聞き入ってくれてるので、私も説明しながら手を動かす。

料理の基本はできてるみたい。
野菜洗ったり、包丁使ったり。
ダシの取り方はさすがに知らなかったみたいだけどね。

すげぇ、と感心している寿は興味深そうに手元を覗いてくる。



「名前は器用なのな」

「一人だけど料理はするからね」

「そういや何で仙道にメシ作ってやってんだ?それも仕事のうちか?」

「えっ……」

「ああ、そういう関係?」

「いや、だから、付き合ってないって」

「まあ付き合ってたら堂々と他の女とデートしたりしないよな」

「でしょうね」

「じゃ、セフレか」

「……っ…」

「図星かよ」



この男は……遠慮というものを知らんのか。
図々しく聞いてくれちゃって。
しかも核心まで突いてくれちゃった。



「何で付き合わねぇんだ?」

「何でって……わかんない」

「好きじゃねぇの?」

「……わかんないってば」



よくわからない、自分でも。
好きじゃなかったらこういう関係になっていなかったのは確かだ。
でもそれが、恋人に対する恋愛感情と同じ好意なのかは定かではなかった。
もしかしたら女癖の悪い仙道くんを端から諦めている自分がいるのかもしれない。

自分から踏み込んできたくせにふーん、と興味なさそうに料理を続ける彼に少しだけイラッとした。 prev / next

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