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「へぇ、名前はあの有名な会社で働いてんのか」「うん、一応」
「そういや仙道とか流川とか前に言ってたよな?」
「彼らは契約してる選手なの。で、私はそんな彼らの契約上のマネージャーみたいな感じ」
「マネージャーか、すげぇな」
「何にもすごくないよ。問題児ばっかりなんだから」
「へぇ?」
「女癖悪かったり、時間にルーズだったり、油断も隙も無いんだよ」
「前者が仙道で、後者が流川だな」
「そうそう……って、え?」
持っていた缶が手元からずり落ちそうになるのをギリギリ止めた。
寿はテレビをつけながら当たり前のようにサラリと当ててしまう。
まるで彼らを知っているかのような口ぶりだな、と不思議に思っていると、
「流川に関しては高校から全く変わってねぇ」
おかしそうに白い歯を見せて笑う寿。
「知ってるの!?」
「同じ高校の後輩だ。仙道は他校だったけど、バスケ部のライバル校」
「じゃあ、牧部長も知ってる?」
「牧って……ああ、海南の牧か?」
「海南?」
「海南大付属高等学校……っていったか?当時の帝王だろ?」
「そう!それ!うわっ、すごいね!」
思わぬ偶然だ。
まさか三人のことを知っているなんて。
妙に興奮気味になる私に寿はガキかよって呆れていたけど。
……でも、こんなに偶然が重なるなんて……ねぇ?
怖いくらいだ。
噂をすれば、と寿はテレビを観たまま呟く。
釣られて画面に目を向けると、バスケットボールの国内リーグ決勝が中継されていた。
仙道くんと流川くんの所属しているチームだ。
……あれ?
「これって生中継?」
「おー」
「変だな、社員の子がこのあと仙道くんとデートだってはしゃいでたのに」
「このあと行くんじゃねぇ?ちょうど終わったし」
102-90
……流川くんのチームが優勝したみたいだ。
確かに仙道くんならあり得そう。
試合後に女の子とデートなんて、日常茶飯事っぽいもんなぁ。
「もしかして、」
「ん?」
「名前の彼氏って仙道?」
「だから、彼氏はいないってば」
「んじゃ、俺の譲った肉の相手?」
「……えっ、それは、まあ、」
「図星か」
「そ、そんなことよりっ!寿のお願いって何!?」
人をここまで無理やり連れてきておいて!
しょーもないことだったら許さないんだからっ。 prev / next