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▼ 『好き』の味
……わ、くん。
一見クールそうなのに本当は全然違うよね。

膝枕してくれっていうし。
勝手に抱き締めてくるし。
キスだってそう。
寿に喧嘩まで売りかけて。

おまけに――こんな大衆の目の前で一目も気にせずキスなんかしてくるんだもん。
本当は全然クールじゃないんだから。

キャーだかギャーだかわかんない叫び声があちこちから聞こえてくる。
でもまるで彼には聞こえていないようだ。
唇を話すと流川くんはコツンとおでこを合わせてくる。



「勝ったから、褒美」

「キスでいいの?」

「……」

「流川くん、」



小さく深呼吸をする。
周りの声はもう……私の耳には届かない。



「好きだよ」

「……」

「流川くんが好き」

「……は?」



流川くんはキョトンとした後、困惑した表情を浮かべる。



「……おれで、いいのか」

「あはは、なにその質問」

「……」

「あんなすごいダンク決めちゃう人とは思えない質問だね」

「うるせー」

「……流川くんでいい、っていうか流川くんがいいかな」

「……」

「付き合ってくれる?」

「……まじ?」

「人生で初めての告白なんだから嘘なわけないでしょ」



……ん?
人生初めての告白なのに、なにこの空気!
流川くんってばなんか考え込んじゃったし……

周りからの視線は突き刺さるわ。
周りの声もどんどん聞こえてくるわ。
私のほうが恥ずかしくなってきちゃったじゃん。


流川くんはくっつけていたおでこを離してじっと見つめてくる。



「……おれと付き合え」

「うん」

「……名前……センパイ」

「名前でいいよ」

「……名前、」

「うん」

「……楓」

「かえで?」

「……って呼べ」



少し恥ずかしそうに呟く流川くん。



「楓」

「ん」

「好き」

「……」

「これからよろしく」



そう言った私に、楓は頷いて――



「……おれのほうが名前を好きだ」



そっとキスをくれた。

とっても甘くて。
でもちょっとしょっぱくて。
すっごく幸せなキス。


私の彼氏は、世界一の『好き』の味を教えてくれた。 prev / next

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