▼ 神奈川県予選決勝リーグ
流川くんにちゃんと告白をされてから早2週週間。あの日から屋上には出向いていない。
また教室に来たりしたらどうしよう、って杞憂も取り越し苦労のようで今の所はその気配もない。
校舎が広いおかげで学校内で見かけることもあまりない。
何度か見かけたけど、なんとなく……彼を避けてしまっている自分がいた。
告白の返事をしてないってのもある。
あとは、彼に言われたセリフ。
『総括的な視点から言い訳ばっかしてねーで素直になれ』……てやつ。
私ってそんなに素直じゃない?
そんなに捻くれてるんだろうか?
流川くんの言葉に言い返す言葉が見当たらなくて、逃げるようにして屋上を出て行って……それっきり。
……さすがにあれは失礼だったかな。
ボーッと渡り廊下を歩いていると、誰かに声をかけられた。
「名前せんぱーい!」
「アヤコちゃん、と宮城くん」
「ちゅーっす!」
「あんまり見ない組み合わせだね」
「教室移動の授業なんでたまたまですよぉ!名前さんはクラスに戻るところですか?」
「そうそう」
宮城くんがアヤコちゃんに気があるっていうのは有名な話だ。
学校中でも、バスケ部内でも。
寿からもよく宮城くんの話は聞いていたから知っている。
なんせ不良時代の一番の喧嘩相手はこの宮城くんで、二人とも入院するほどの大事件になって当時はやばかったんだから。
「そういえば名前さん、最近三井先輩となんかありました?」
「……寿?別になんにもないけどなんで?」
「部活中の様子がおかしいんですよねー。集中力に欠けるというかなんというか」
「クラスでは特に変わった様子はないと思うけど……私から言っておこうか?」
「い、いえ!そんなこと頼んでバレたら怒られちゃいますよぉ!」
アヤコちゃんは焦ったようにブンブンと首を左右に振る。
「流川とは、」
「……」
「なんかありました?」
宮城くんが試すように聞いてくる。
その隣でアヤコちゃんが更に焦った顔で宮城くんを見ていたのを見逃さなかった。
寿と流川くんの間に何かあったのかも、と。
こういう時の女の勘ってのは、いやってほどよく当たる。
「二人ともギスギスしちゃってやりづらいんすよねー」
「……」
「流川は三井サンに闘争心燃やしまくりだし」
「……」
「原因っつったら苗字先輩のことしか考えられないんっすよ」
「……」
はぁ。
いつから私、こんなにバスケ部に関与するようになんたんだろう。
ついこの間までは全然関係なかったのに。
バスケ部内がそんな風になってるのは知らなかった。
さっきも言ったけど、クラスでの寿はいつもと変わらないし。
流川くんに関してはしばらく会ってない。
「日曜日は決勝リーグの最終戦も控えてるんで、このままじゃやばいんですよ」
「だからってどうしろっていうの?」
「なんとかしてくださいよ」
「なんとかって……」
「苗字先輩しかあの二人を扱えないんっすから」
それだけいうと、急にすいませんでした、と二人は頭を下げて去って行った。
残された私の胸中にはなんとも言えない蟠りが残る。
二人に言われたことをグルグルと考えながらあっという間に放課後を迎えると、珍しく’彼’に呼び出された。 prev / next