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▼ 元カレの後輩くん
「名前ー、行くよー」

「はいはい、いま行く」



帰りのホームルームが終わって荷物をまとめていると、隣のクラスの美里が教室の入り口から名前を呼ぶ。
今日は一緒にカラオケに行く約束をしているのだ。

美里の元へ向かおうと席を立ったところで、ふと隣の席に目が留まる。
机の中からはみ出ている、ソレに思わずはぁっとため息がこぼれる。



「どうしたの?ここって三井くんの席じゃなかったっけ?」

「……見てこれ」

「進路希望調査票?」

「そう、今日までの」

「あはは、さすが三井くん。白紙じゃん!」

「ただでさえ先生に目付けられてんのに、推薦すらなくなったらどうするんだか」

「届けてあげたら?」



めんどくさいなぁ。
進路希望調査票くらいちゃんと提出しなさいよ。

玄関で待っていると言った美里とわかれて、私は体育館へと向かった。


ダンッダンッダンッ
体育館に近づくに連れ聞こえてくるバスケットボールの音。
一定のリズム音は少しだけ心地いい。



「寿!」



入り口に立っている女の子達の間を通り抜け中へ入ると、案の定バスケ部が練習をしているところだった。
私の声に気付いた寿はギョッとしながらこっちに歩いてくる。



「名前が練習見に来るなんて珍しいな」

「なに呑気なこと言ってんのよ。そんなわけないでしょ」

「はぁ?じゃあ――」



なんだよ、って顔をする寿の前に持っていた進路希望調査票を押し付けてやった。



「これ、今日まで」

「……」

「ちゃんと提出しないと推薦すらなくなるよ」

「……」

「バスケ馬鹿」

「……やべー、完全に忘れてた」



忘れてた、じゃないし。



「サンキュ。まじ助かったわ」

「貸し1ね」

「名前、テメー」

「……」

「チッ」



ほんと口が悪いったりゃありゃしないんだから。
元不良も口の悪さだけは一流ね。

そんなやり取りをしていると、見たことない二人組がなにやらすっごい揉めながら私たちの横を通り過ぎて行く。
とっても目立つ赤髪の男の子にクールそうな黒髪の男の子。
どっちかというと、赤髪の子が黒髪の子に一方的に突っかかっているように見えるけど。



「じゃあ私――」



行くから、と言いかけた声が一瞬にしてかき消された。
関わる前に帰ろうと思ったけれど……遅かったみたい。



「ミッチー!!!」



……みっちぃ?
まさかこの赤髪の子、寿のこと呼んでるの?

驚く私の目には、「うるせぇ!」と呆れた声で叫んでいる寿が映っていた。 prev / next

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