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白くて綺麗な長い指。ギュッと掴んだ手は男の子らしさをアピールするように力強い。
「……先輩って、」
「ん?」
「……あの人と付き合ってたんだろ」
「あの人って……寿のこと?」
私の問いかけに流川くんはコクリと頷く。
「付き合ってたよ」
「……」
「なんで?」
「……べつに」
ん?
なにこの空気。
すっごい険悪なムードが立ち込めているような気がするのは気のせい?
流川くんを一言で表すとしたら、不思議って単語がよく似合う。
猫みたいにのんびり屋さんで。
猫みたいに気まぐれ屋さんで。
猫みたいに何を考えているかわからない、不思議な人だ。
「流川くんって猫みたいだね」
「……ねこ?」
「そう。のんびりで、気まぐれで、なに考えてるかわからない」
「……」
「昨日の今日だから普通なのかもしれないけど、掴めない人だなぁって」
説明すればするほど猫に思えてきた。
とっても完璧な説明文!
なのに当の流川くんはムッとした表情を浮かべている。
「……おれは知ってた」
「なにを?」
「先輩」
「そりゃ同じ部活だから――」
「違う、アンタのこと」
寿のことかと思ったら、流川くんの指す先輩は私だったようで。
「入学した時から知ってた」
「……そうなの?」
「新入生の案内板みたいなのやってたから」
言われてみれば、確かにそんなのやってたっけ。
入学式当日のこっちですよーあっちですよーみたいなやつ。
そんな時から流川くんが自分のことを知ってくれていたことに驚きを隠せない。
しかも……ちゃんと顔まで覚えててくれたんだ。
「……猫って記憶力いいの?」
「……さぁ?」 prev / next