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ボックス☆マジック


*オリジナルアニメの内容を含みます。


「な、隊長。俺やってみてーことあんだよな〜。」


ある日の冬島隊隊室。


悲劇か喜劇かはわからないそれが、

今まさに、起きようとしていた。





「なんだっけな〜あれ。ブロックみたいなのに人を閉じ込められるやつ。」


「あぁ。エルガテスのやつか?あれがどうした?」


「あれ、ふつーに使えんじゃねぇ?閉じ込めるだけじゃなくて、閉じ込めたあと小さくして外からまとめて狙撃とかできねーの?」

「あー……確かに。…ちょっくら挑戦してみるか。」

「おっし!」


これが、全てのはじまりである。














「おっ、ゆき!おまえイイところに来たな〜!おもしれーもん見せてやる。来いよ。」

「あっ、当真さん!い、いきなりですね……。でも私、遊真くんと模擬戦の約束していて…。」

「んなもん、空閑に連絡しとけばいいだろ?なんなら空閑もウチの隊室に呼べよ。数は多い方がいいからな。」

「は、はい。じゃあ…って、は、はやいです当真さん!!」

「おーおー。早く行こうぜ」


遊真くんに素早くメールを打ち、スタスタと歩く当真さんの後ろを慌ててついていった。



「おっ、早いな。早速行くか?」

「おー。頼むわ隊長。あとで空閑もくるから、とりあえず試そうぜ。」

「えっ、ちょ、………わぁ、!?」



気がつけば、正方形の箱のようなものの中に閉じ込められていた。真っ白の空間に、自分だけがいる。いったい、なんなんだこれは。


「ちょっ、と、当真さんっ!?な、なんですかこれ…!!」

「ん?なんだ説明してなかったのか?」

「エルガテスっつー国の開発した、特殊なブロックの空間をウチの隊長が作ってみたんだよ。ま、細かいことは気にすんな。」

「で、出れないやつですか…。」

「それを確かめてーんだ。中の様子はこっちから見えねーしな。ちょっくら弧月で中から切ってみろよ。」

「はい……っ、うわ、かた…。旋空…もムリですこれ。」

「おーおー。結構いい出来なんじゃねーの?…おっ、空閑が来たな。追加行くぜ〜。」



「ぇっ、!?」

「うわっ、なんだこれ。……おっ、ユキちゃん。ここにいたのか。」

「ゆ、遊真くん!ごめんね、約束してたのに…。」

「だいじょうぶだよ。それより早く出ようぜ。…これ、この前のエルガテスのやつに似てるな。簡単には壊れない、か。……さて、どうしたもんかな。」


ガキンガキン!とスコーピオンが弾かれる。なにか案はないか、と考え始めたその瞬間。異変は起こった。


「ん…?…この部屋、小さくなってるな。」

「……ほ、ほんとだ……と、当真さん!?」


「おーおー。もうすぐ帰してやるから、もうちょい付き合ってもらうぜ?そのハコ、どんくらい小さくできるかだけ試させてくれよ。」

「え、えぇ……、」


迫りくる壁面にジリジリと追いやられ、気がつけばトン、と遊真くんの背中とぶつかった。お互いが振り向き、思ったより近い場所でぱちりと合った視線に、心臓がバクバクと鼓動を速めた。


「と、当真さん!!もうこれ以上小さくできません!!止めてください…!!」

「おー。だってよ隊長。」

「りょーかい。……ん?あれ、」


「ちょ、と、当真さんはやく!!」

「…っ、悪い、ユキちゃん。」

「へっ、…ぁ、」


「あー、止まった。……あれ、元に戻せないな。……ちょっと待ってろ。すぐ出してやるからな。」

「まじかよ。おもしれ〜。俺もついてくなー。」


「う、うそ…っ、」

「…すまん、ユキちゃん。」


2人入るには明らかに狭すぎる長方形。女の私と、小柄な遊真くんだからなんとか収まっているであろうその小さな空間で、


現在進行形。遊真くんに押し倒されていた。



「……おれの判断ミスだな。」

「う、ううん!遊真くんがこうしてくれなかったら、つ、潰れてたかもしれないし、だから、その、」

「もうちょっとだけ、我慢できるか?」

「う、うん!」


私の顔の両側に手をつき、足は私の足の間に片膝しかついていない遊真くん。それに対して、両足を立てて仰向けに寝転がるような姿勢の私。

どちらがキツイかなんて一目瞭然なのに、私の心配をしてくれる遊真くんに感謝の反面、遊真くんとの距離の近さの照れが容赦なく襲いかかってくる。


じっ、と私を見下ろす遊真くんと視線を合わせるなんてできなくて横に顔を逸らす。遊真くんの腕が視界に移り、はっ、と冷静な気持ちが少しだけ戻ってきた。


「ゆ、遊真くん、腕、その、疲れてない?大丈夫?」

「大丈夫だよ。気にするなユキちゃん。」


にっこり笑って言ってくれる遊真くんに、疑惑の念が生じてくる。ほんとうに、大丈夫かな?こんな事態だし、気をつかってくれてるんじゃ。

そう思ってしまったら、もう本当にそうなんじゃないかという考えが頭から離れず、思い切って、ぱっと遊真くんを見上げた。


「ゆ、遊真くん!」

「……ん?」

「そ、の。腕とか、疲れたら、私にもたれかかってもいいから………む、無理はしないでほしい、です…。」


ぱちくりと目を瞬かせる遊真くんに、顔がじわじわと真っ赤に染まっていく私。

自分が言った通りの展開になってしまったらどれだけ恥ずかしいことか、考えずに喋り始めたことを激しく後悔していた。


「…あのな、ユキちゃん。」

「は、はい…!!」


「あんまりそういうこと、軽々しく言うなよ。……おれも男だって、ちゃんとわかってるか?」


少しだけ困ったような、余裕が無いような目をジロリと向けられ、思わず目を逸らしてしまう。遊真くんは男だなんて、わかってはいるけども、


くい、と遊真くんの服の袖を控えめに引っ張る。

「ゆ、遊真くんが優しいから……。遊真くんが、こんな状況なのに、私のことばっか考えてくれるから……。そ、それに、私、遊真くん大好きだから、ちょっと、くっつくくらい、ぜ、全然だいじょうぶ、だよ…!!」


「……っ、」



遊真くんの頬にサッと赤色が混じる。フイ、と逸らされた視線に少しだけ驚いた。


「ゆ、遊真くん…?」

「……見るなって。」

「わ…っ!?」


遊真くんの手のひらで視界が遮られる。少し拗ねたような声色も、赤が混じった表情も、なんだか新鮮で、もう少し見たかった。と残念に思ってしまった。



「……ユキちゃん。」

「……?」


「……別に疲れてないけど、…お言葉に甘えて。」


ぽすり、と私の肩に頭を預ける遊真くん。遊真くんのふわふわの髪の毛が私の顔を掠め、くすぐったい、と感じる暇もなく、息を潜めた。

遊真くんの吐息が聞こえるたび、心臓がばっくん、ばっくん!とこれ以上ないくらい音を立てる。



「……心臓、ばくばく、だな。」

「……っ、」

「これに懲りたら、もうあんな発言……」




パチンッ、と軽快な音が響いた。周りの風景は一気に冬島隊隊室に変わる。


当真さんが「わりーわりー。」と笑いながらやってきたので、とりあえず当真さんとは話し合いが必要だな。と思った。





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