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*19話以降の話になります。



「おっ、ゆきちゃん。こないだぶりだな〜。」

「迅さん……!!こんにちは!」


スッ…とぼんち揚の袋を差し出されたので、にっこり笑顔で1枚もらう。結構好きなんだよね…。

ボリ、とぼんち揚をかじる。迅さんとは玉狛で過ごしたときの暗躍?以来だ。

というか、迅さんとまともに話したのはあのときだけのはずなのに、すっかり馴染み深い人というか、なんだろう、この安心感は。

きっとあの日の出来事は、私にとって、とても大切な日になったからだろうなぁ、と思うと同時に、ふ、と言葉が浮かんできた。



「迅さん、……遊真くんのこと、本当に、ありがとうございました。」

「いやいや、おれは何もしてないよ。話したのは遊真だし、受け止めたのはゆきちゃんだ。」

「……迅さんに会って、あのとき声をかけてもらっていなかったら、私は今でも遊真くんの上辺だけを見て、好きって言っていたと思います。それは、……すごく怖いことだから。あのとき遊真くんのことを知れて、よかったです。だから、ありがとうございました!」



ずっと言いたかったけど、想像以上に機会に恵まれず言えなかった言葉たちがぽんぽんと頭の中に浮かんでくる。安心感?そりゃそうだよ。…だってこんなにお世話になっていたんだから。


「……きっと遊真も、ゆきちゃんみたいな子に好きになってもらえて、嬉しいと思うよ。」


良い子だな〜と頭をぽふっ、と撫でられ、少しだけ照れてしまう。そうだといいなぁ、と心の中でこっそりと思った。


微笑ましそうに笑った迅さんの表情はとても優しい。そんな表情のまま、ぽつり、と語り出す。


「おれさ、嬉しいんだよ。遊真のことをこんなに想ってくれる人が1人でも増えて。」

「……それは…?」

「ゆきちゃんも聞いたと思うけど、あいつ、中々ハードな人生送ってるだろ?それに、こっちの世界も、まだまだあいつの生きにくいところはたくさんあると思う。……だからさ、"遊真"を大切に想ってくれるゆきちゃんには、ある意味感謝だな〜。」

「……いえ、そんな……。」



迅さんって、たくさん修羅場を経験してるだろうし、実力がある人だから、もちろん厳しさもあるんだろうけど……きっとその分、本当に優しい人だ。

だからってわけじゃないけど、じゃあ優しい迅さんに優しくしてくれる人は?"迅さん"のために何かをしてくれる人って、どれくらいいるんだろう。なんて、お節介なことを考えてしまった。

迅さんの交友関係なんて知らない。きっと、玉狛の人達くらい仲が良い人も、たくさんいるんだろうけど。


でも、"私"がお世話になったんだから。



「わたし、遊真くんが一番好き、ですけど……迅さんにとても感謝してます。迅さんが遊真くんや私のことを考えて行動してくれたみたいに、迅さんの役に立つことで私にできること、あったら言ってください。お手伝いします!!」


迅さんの目をしっかり見て言うと、少し驚いたような表情をする迅さん。そのあと、ふ、と表情を緩めてくれる。


「読み逃したな…。いや、読み逃したというより…」

「迅さん…?」

「ん?…んー、なんでもないよ。ありがとな。ゆきちゃん。いやー、そんなこと言われちゃったら、これからたくさん招集かけちゃおっかな〜。実力派エリートは仕事が山積みだからな〜〜。」

「えっ、あ……ゆ、遊真くんとの時間だけ確保、させてください…。お、お願いします…!!!」


「ははっ!!ブレないな〜ゆきちゃん。冗談だよ。ゆきちゃんはゆきちゃんで、遊真のこととかいろいろ頑張ればいいよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる。」

「それは、どういう…?」


「そうだなー。ゆきちゃんはただ遊真のために頑張ってるんだろうけど、それが意外にも、ゆきちゃんが想像してないところで役に立ったり、必要とされるかもしれないってこと、かな?」

「???……む、難しい、ですね…?」


「大丈夫大丈夫。おれも応援してるよ。……ゆきちゃん頑張れよ。たまにはおれも力、貸してあげるから。」


ぽんぽん、と頭を撫でられてから、また1枚ぼんち揚をもらう。うん、おいしい。

でもね、迅さん。


「迅さん!サイドエフェクトの力は借りません。…けど私、頑張るので!!……結果出せたら、お話聞いてください!」

今度はもう、迅さんの表情は変わらなかった。
ただただ、にこにこと笑みを浮かべている。


「そっか。待ってるから、いつでもおいでよ。」


おれでよければ、と呟かれた言葉に、笑顔で頷いた。









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