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君の瞳に映るのは


「遊真くん!!」

「ユキちゃん。こんにちは。」

「こ、こんにちは!!」


だれか対戦してくれる人はいるかな、とランク戦のロビーを覗いてみると、大きな赤い瞳とぱちり。目が合った。ニコリと笑って手を振ってくれるので、私も嬉しさを噛みしめながら遊真くんに近寄った。


「遊真くんも今来たところ?」

「そうだよ。だれかおれと戦ってくれるやついるかなって思って。」


チラリと流し目で見られ、ドキっと心臓が跳ねる。わたし、でもいいのかな。



「じゃ、じゃあわたしと…!」
「あーーー!!!遊真先輩とゆきちゃん先輩だー!!!」

「うおっ、」
「わぁっ!?」


大きく腕を広げながらキラッキラの笑顔で私と遊真くんに突撃してきたのは、緑川くん。そのまま私の左腕と遊真くんの右腕に自分の腕を絡ませ、間に入ってくる。相変わらず無邪気でかわいくて、思わず頬が緩んだ。


「ねえねえ!!どっちかおれと模擬戦しよー!!」

「えっ、」

「おっ、いいね。」

「んじゃ、遊真先輩!!10本勝負ね!今度は絶対勝ち越すから!」

「負けても泣くなよ。ミドリカワ。」



「遊真先輩の次はゆきちゃん先輩だからーー!!」と大きな声で叫びながら遊真くんを引きずり足早に去っていく緑川くん。その一瞬の出来事をポカン、と眺めていることしかできなかった。


画面には早速、[空閑][緑川]の文字。楽しそうに睨み合う2人の姿が映し出される。


遊真くん、楽しそうだなぁ。


ぎゅっ、と自分の手を丸め、握りしめる。


(私と対戦するときも、遊真くんは楽しそうにしてくれるけど、……やっぱり、緑川くんの方が強いし、楽しいのかなぁ。)


自分の手を開き、見つめる。頑張ってはいるけども、なんだか随分頼りない手に見えた。


(やっぱり、私じゃまだまだ……。)


「オイ、一ノ瀬。」

「…あ、カゲ先輩!!こんにちは。」

ニコ、と笑顔を見せるが、なぜかカゲ先輩の眉間のシワは深まるばかり。な、なんでだろう…と慌てていると、ビシっ、と私のおでこにすばやいデコピンがくりだされた。

またまたポカン、と呆気にとられてしまうが、じんじんとおでこが痛みだし、はっ、とカゲ先輩を見る。

「い、痛いです!!まだ私、生身ですよ!?」

「デコピンごときでぴーぴー言うんじゃねーよ。お前がらしくねぇ感情向けてくんのが悪い。」


…そうだ、カゲ先輩にはSEがあったんだ。と今さらながらに思い出す。きっと、さっきまでの暗い気持ちがカゲ先輩に伝わってしまったんだろう。


「あ、ご、ごめんなさい…。」

「別にいーけどよ。…珍しいな。お前みたいなヤツでも、ヘコんだりすんのな。」

「…ヘコんでるわけじゃ……。」

「あ?だれか空閑と戦ってんな。なんだお前、空閑に構ってもらえねーから拗ねてんのか。」

「ち、ちがいます!!!」

「急にデカい声出すんじゃねーよ。図星か?」


ニヤニヤと笑うカゲ先輩をジト目で見つめる。 拗ねてる、わけじゃなくて……。


「……私なんかと戦うより、緑川くんの方が強いから楽しいんじゃないかなって、思っただけです。」

「なんだそりゃ。メンドクセーこと考えてんなお前。だったら強くなりゃいい話だろーが。」


思わず目をパチクリ。なんてわかりやすい解答。
違いねぇだろ。と続けるカゲ先輩に、ふふ、と笑みがこぼれてしまった。


「…はい。そうですよね!…悩むくらいなら、もっと訓練します!」

「おー。じゃ、ブース入れや。俺が早速、ボコしてやるよ。」

「はい!本気でお願いします!!」


カゲ先輩が楽しそうに笑うので私もニッ!と笑い返した。


(いつか、カゲ先輩にだって勝ってやる!!)

そのときにはきっと、遊真くんをもっともっと楽しませることができると、わかっているから。


私は私で、頑張ればいい。


[転送開始。]

「よろしくお願いします!!」

「…全力で来いよ。一ノ瀬。」






















「ちぇー。また負けたー。今日はいけると思ったのになー。」

「……ん?ユキちゃん、かげうら先輩と戦ってる。」

「あ、ほんとだ!ゆきちゃん先輩、うわ、結構ぼろ負けしてるな〜…あ、1本とった!!負けてるのにゆきちゃん先輩、すっごい楽しそう!!」

「…かげうら先輩も、楽しそうだ。」

「あっ、向こうも終わったみたいだね!!」







「カゲ先輩!!今日は!2本とりましたよ!!」

「チッ。まぐれだっつーの。俺の技パクっといて調子のってんじゃねーぞコラ。」

「いつも参考にさせてもらってます!マンティス使うようになってからは、カゲ先輩の記録たくさん見てますからね!!」

「見んじゃねーよ。…ったく…。」










くしゃくしゃとユキちゃんの頭を撫でまわす様子を見て、少しだけ、驚いた。

そういえばいつか、かげうら先輩はユキちゃんを気に入ってるって、むらかみ先輩が言っていたことを思い出す。

それに、かげうら先輩だけじゃない。むしろ、ニコニコと楽しそうなのはユキちゃんの方だ。




(……あれ、なんだこれ。)






「あの2人、仲良しだね。なんか意外だなー。」

「………ミドリカワ。」

「ん?どしたの、遊真先輩。」



「おれの方が仲良しだよ。」


口から溢れでたその言葉に、ミドリカワが目を丸くする。



「…えっ?……ご、ゴメンナサイ。遊真先輩。」

「…じゃあ、またな。ミドリカワ。」


表情を固まらせたミドリカワを横目で見てから、足はユキちゃんと、かげうら先輩の方へ向かう。


かげうら先輩が、怪訝そうにこちらを振り向くのが見えた。








「遊真先輩こっわ〜…。あの顔で2人のとこ行くつもりかな…。てか、仲良しって、…どっちのこと??」


ゆきちゃん先輩との対戦はまた今度だな、と不穏な空気を察して、緑川はその場を離れた。





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