ずっと前から好きでした!私と模擬戦してください! | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

23


「か、勝った!!!カゲ先輩、私がんばりましたよ!!」

「あ"ぁ?勝ったっつっても、9対1だろーが。こんなんで喜んでんじゃねーよ。」

「あぅ、いたた…で、でも、1勝は1勝ですからね!!今度、ご飯奢ってください!!」

デコピンされたおでこをさすりながら、少し得意げにカゲ先輩を見つめると、「…お前、空閑に似てきたな。」と言われ、ドキリとする。

「空閑にはもーちょい勝てるようになったのか。」

「え。」

「?…空閑とはバチバチやりあってんじゃねーのか?」

「いや、あのとき以来、対戦してないです…。最近、中々会えてませんし…。」

「そーかよ。ま、なんでもいいけどな。じゃ、俺、隊室戻るわ。飯、今度連れてってやるから空けとけよ。」

「は、はい!!ありがとうございました!!」


お辞儀をしてカゲ先輩を見送ってから、少し考える。



そういえば、あの日から一度も遊真くんと会ってない。

ちょうど学校も授業がないので行かなくてもいい時期に入り、ボーダーで会えないと本当に接点がなくなってしまう。


やるべきことがたくさんあって、それを一生懸命やって、そんな生活を送ってたから気づかなかったけど、


「…遊真くんに、会いたいなぁ……。」


気づいてしまうと、案外寂しいものだ。




キョロ、とブース内を見渡す。もちろん遊真くんの姿はない。

(…探してみたら、意外と会えたり?)

そんな考えが頭をよぎり、ボーダー内を探索してみることにした。

後から考えるとバカなことをしてる、だなんて、すぐわかることだったのに、そのときの私は、そのことにすぐに気づかなかった。













「……いないな…うん、」

はぁ、とため息をつき、人気の少ない通り道で座り込んでしまう。

こんなことしたって、会えるはずないのに。第一、今日ボーダーに遊真くんが来ているとは限らないのだ。なのになんで、こんなに、

気力が、落ちてしまう。


(がんばれない……。)






「おい、嬢ちゃん。どうかしたのか?」

「…??」


ゆるやかに顔を上げると、帽子の下から覗く切れ長の目つきに、少しびっくりする。けれど、心配されていると理解してから、「だ、大丈夫です。」と答える。

「そうか。」と聞こえたので、また顔を伏せようとするが、帽子の人が立ち去る気配はしなかった。


「じゃあ、大丈夫なお前は、ここで何をしてるんだ?」

「……え。」


思わずバッ、と見上げると、今度はニヤリと笑う口元が見えた。思わぬ展開に言葉が詰まってしまう。


「俺に話してみろよ。知らないヤツの方が、案外話しやすかったりするもんだろ?」

「……そ、そんな、大層な話じゃないんです、お時間とるのも申し訳ないくらいで…。」

「大層な話じゃないかどうかは俺が決める。」

「え、えぇ……。」


「横暴だ…」と呟くと、「悪いな。」と小突かれた。いてて。ちょっと強引だけど良い人だな。というのがすごく伝わってくる。


「その、最近、会えない人がいて、少しだけ寂しくて、」

「なんだよ。好きなヤツか?」

「うっ、ぁ、……そう、です…。それで、私はその人にいつも元気というか、がんばる気持ちをもらってたようなものだったので、なんだか、モチベーションが下がってしまって、…すいません。それだけなんです。」

「ソイツに会えねぇのか?」

「学校は今、授業ないですし、ボーダーでも最近会えなくて…、」

「へぇ、ボーダーにいるんだな。」

「…!!!」


か、からかわれる…!と、それ以前に随分とネタを提供していたくせにハッと思い、隣を向くと帽子の人は少し考え込んでいて、なんだかその真剣な様子に少しだけ拍子抜けしてしまう。


「もしかしたら、俺の知り合いかもな。そしたら…「…荒船?」

「鋼じゃねぇか。」

ひょこり、と現れたのはまさかの鋼先輩で、「鋼先輩。」と呟くと帽子の人で隠れていた私に気づき、「一ノ瀬。」と声をかけてくれた。


「2人は知り合いだったんだな。」

「いや、今ここで会った。お前、一ノ瀬って言うんだな。」

「は、はい。一ノ瀬ゆきです。よろしくお願いします…というか、もうすでにお世話になってます、荒船先輩…。」

「?…どうかしたのか?」

「一ノ瀬が、会いたいヤツがいるんだとよ。」

「ちょ、荒船先輩…!!!」

鋼先輩は、わかってしまうから…!と言う前に「あぁ。」と声が聞こえ、体が凍りつく。


「もしかして、空閑のことか?」

「…は?空閑?そうなのか、一ノ瀬。」

「………。」

「空閑ならさっきまで一緒にいたぞ。まだ、ロビーにいるんじゃないか?」

「ほ、ほんとですか…!!」

「おう、よかったじゃねぇか。」


「行ってこい。」と、くしゃりと頭を撫でられる。少々荒っぽいその動作に、少しだけ笑ってしまう。


「荒船先輩。」

「なんだよ。」

「声かけてくれて、ありがとうございました。今度会ったら、仲良くしてください!」


「…いいぜ。お前も、こんなとこで下向いてないで、がんばれよ。」

「はい!!」


すっ!と立ち上がり、荒船先輩と鋼先輩に頭を下げてからロビーに向かって走った。


遊真くん、まだいるかな…!!








「…アイツ、少し前にお前が笑いながら言ってたヤツだろ?」

「あぁ。おもしろいだろ?」

「そうだな。なんつーか、すげぇ素直だよな。」



そんな会話がされていたとは知らず、ロビーに到着した私は、遊真くんををキョロキョロと探していた。


[ back to top ]