ずっと前から好きでした!私と模擬戦してください! | ナノ
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「カゲ先輩!!こんにちは!!」

「おー、一ノ瀬。」


今日は模擬戦をしよう、とブースに立ち寄りその中で見慣れた先輩を見つけ、声をかける。

キョロキョロと辺りを見渡すが、どうやらカゲ先輩1人らしい。ちょっと珍しいかも。


それじゃあ…!!と期待を込めた目でカゲ先輩を見つめると、その感情が刺さったのか、まだ何も言っていないのに「…んだよ。」と訝しげな目で見られてしまった。


「カゲ先輩!今、お時間あれば、私と模擬戦してください!!…カゲ先輩とはまだ対戦したことなかったですよね?」

私の言葉を受け取り、ニヤリと笑った口もとが見える。

「いいぜ。…俺から1本でもとれたら、飯奢ってやるよ。」

「やった!!全力で行かせてもらいますからね!!」

「あぁ、全力で来ねーと………、いや、待て。……あー、チッ、めんどくせーな…。おい一ノ瀬。対戦は後だ。ついてこい。」

「えっ…?」

「早く。」

スタスタとブースから立ち去ろうとするカゲ先輩。なにか用事があったのだろうか、とりあえずついてこいと言われたのでカゲ先輩についていく。

が、しかし。カゲ先輩の足音よりも早い足音が後ろから聴こえてくる。思わず振り返ってしまうと、カゲ先輩の舌打ちが同時に聞こえてきた。


「カゲ〜!!こんなトコで会うなんて、奇遇だね〜。」

「犬飼……。チッ。」


ニコニコと愛想良く近づいて来た男の人。一瞬、今この人を避けようとした?と考えてしまうが、いやいや、でも仲よさそうに近づいてきたし…と思考が混乱してしまう。


うーん、と考え男の人を見ると、ぱちりと目が合う。
やっぱり愛想が良く、私にもニコニコ笑って手まで振ってくれる。や、優しい…。けれど、カゲ先輩の機嫌は一向に直りそうにない。


「カゲが女の子といるなんて珍しくない?あ、俺、犬飼澄晴。二宮隊だよ〜。ちなみに、犬飼だけど犬は飼ってないからよろしくね。」

「は、はい…。あ、一ノ瀬ゆきです。よろしくお願いします。」

ぺこり、と頭を下げると、「ケッ。」とカゲ先輩がとうとうイライラを隠さないようになってしまった。
ど、どうすれば……こ、鋼先輩!!

そんな雰囲気でも慣れたようにニコニコ笑う犬飼先輩にすごいなぁ、と思っていると、ねね、と続けて話しかけてられる。ほんとに、カゲ先輩と犬飼先輩は、なんというか、対照的だ。

「ここにいるってことは、一ノ瀬ちゃん攻撃手?部隊組んでたりする?」

「あ、はい!!攻撃手で、部隊は組んでないです。」

「もしかして今から、カゲと対戦するつもりだった?……大丈夫?」

この会話中、犬飼先輩は終始ニコニコしており、最後のも心配、と言うよりはおもしろがっている感じだ。

カゲ先輩はもう、ため息でもつきそうなほどだ。私たちの会話を聞きつつ、足は外側を向いている。


なんとなくこの2人の関係が少しだけ見えてしまったが、「大丈夫?」という言葉がちょっと、引っかかってしまったので、犬飼先輩を見つめる。その笑顔は、崩れない。


「まだまだ私じゃカゲ先輩とは、残念ながらとても対等には戦えないんですけど…勝つつもりで、全力で当たってきます!!」


「1勝したらご飯奢ってくれるらしいです!」と付け足すと、ポカン、と少し驚いたあと、口もとを抑えて、下を向いてしまった犬飼先輩。

「い、犬飼先輩…?」と心配して声をかけてみるが、よく見ると震えているのに気づく。……ん?


「…っ、な、なにこの子。おもしろすぎ〜…っ、はー、もーダメ!!てか飯奢るとか、気に入りすぎでしょ。もしかして知らないの俺だけ?うわ、ショックだな〜。」

「安心しろ。鋼以外は大体知らねぇんじゃねーの?あと、気に入ってねぇ。」


カゲ先輩の言葉に少しショックを受けると、カゲ先輩の肩に手を乗せなお笑う犬飼先輩。それをすぐさまぺっと振り払うカゲ先輩。…あれ、そんなに…?と頭に思わずはてなマークを浮かべる。


「俺、一ノ瀬ちゃんがカゲをボッコボコにする姿、見てみたいな〜〜。」

「ハッ、そんな日が来るかよ。」

「辻ちゃんと戦ったらどうなるんだろうな〜、うわ、見たいな。ね、一ノ瀬ちゃん。今度ウチの辻ちゃんと対戦してみてよ。辻ちゃんに勝ったら、俺が飯奢ってあげる。」

「?…犬飼先輩に、ではないんですね。」

「うわ、意外と好戦的じゃん。俺、銃手だしね〜。ごめんね一ノ瀬ちゃん。」

「辻ちゃん、ですか…。」


誰だろ、女の子かな??と勝手に想像してみるが、多分違う気がするのですぐその想像を消す。

そして時計を見て「やべ」と呟く犬飼先輩。どうやら用事があるらしい。


「じゃ、またね〜。カゲ、一ノ瀬ちゃん。」

「あ、はい!!お疲れさまです!」

「うん。お疲れさま〜。」


手を振る犬飼先輩に今度は私も手を振る。
楽しい先輩だったなぁ。と余韻に浸っていると、カゲ先輩に「オイ。」と言われ再びブースの中へ。どうやら模擬戦をするらしい。


「俺に勝つんだろ?…やってみろや。」

「は、はい!!」


不敵に笑ったその表情に、私も笑って返した。














「こんにちは。」

「犬飼先輩。」

「そろったか。ミーティング、始めるぞ。」

自分の席に座る前に辻ちゃんの近くまで行く。
「どうかしましたか?」と話しかけてくるこのかわいい後輩に、先ほどのことを思い出し、少し笑ってしまう。


「ね、辻ちゃん。今度、"一ノ瀬"って攻撃手と対戦してみてよ。」

「?…なんですか、いきなり。…また先輩、何か企んでるんじゃ…」

「失礼だな〜。カゲに勝つつもりみたいだったから、ウチの辻ちゃんはどうかなって思っただけだよ?」

「……"一ノ瀬"?」

「あれ、二宮さん、知ってるんですか?」

パッと2人の視線を受けるが目を逸らし、いや。と呟く二宮さん。マジか〜。


「…まぁ、攻撃手なら、機会があればまた今度。」

「おっ、結果教えてね〜!!」


その言葉を受け、席に座る。辻ちゃんに「先輩、楽しそうですね。」と言われてしまい、思わず微笑んでしまった。



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