ずっと前から好きでした!私と模擬戦してください! | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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19


遊真くんを見上げながらボロボロと涙を溢す私。

そんな私に目線を合わせようと、遊真くんがしゃがみ込む。


「この屋上よく来るけど、こんな場所あったんだな。なるほど、こりゃ気づかん。」

「…へ、…ゆうま、くん?」

「場所、移動しようか。おれがいたところの方が、景色がいいよ。」

「………ぇ!?ひゃ、…!?」

「よっ」と小さく声が聞こえ、膝裏と背中に遊真くんの腕が回されそのまま持ち上げられる。お、おひめさまだっこ…と呟くと同時に、顔に急速に熱が集まっていくのを感じた。その声に反応したのか、こちらをジッと見つめる遊真くん。ひぇ…顔がちかい……。

先ほどまで号泣していたとは思えないほど涙はぴたりと止まり、開いた口が塞がらない。そんな現金な私にニッと笑いかけ、「おれの首に手、まわせるか?」と聞くので慌ててブンブン首を横に振る。クビニテヲマワス…?なにそれむり…と空いた両手で顔を覆う。遊真くんが笑った気配がした。


「はい、とーちゃく。…すぐだっただろ?」

「…生きた心地がしなかったよ…。」


そうか?なんて言う遊真くんはいつも通りで、私もあんな話さえ聞いてなかったら、と悲しさが戻ってくる。

ストンと2人で腰を下ろす。訪れる静寂。

それを破ったのは、遊真くんだった。


「ユキちゃんには悪いけど、死なないでってゆうか、おれ、もう、一回死んでるんだよね。」

「……え、」

「おれは、門の向こう側から来た近界民だって言ったら、ユキちゃん、信じる?」


ネイバー。その単語を聞くと同時に、自分の喉がごく、と音を立てたのが聞こえた。

困惑した表情を隠さず隣に目を向けると、イタズラに笑う遊真くんとバッチリ目が合う。きゅん、と高鳴る鼓動は、例え遊真くんが何者でも、いつもと同じだった。


「…信じるよ。…というか、遊真くんがどこから来たどんな人でも、…わ、わたし、遊真くんが好きだから!…関係、ないよ…っ…。」


カアア…と熱くなる顔を、何回遊真くんに見られたことだろう。最後の方はほとんど消え入りそうな声になってしまったが、遊真くんに聞こえてるといいな、と密かに願った。


「……ユキちゃん、」

「ど、どうしたの、ゆうま、く…!?」


ふっ…と遊真くんの表情が和らぎ、甘さを増す。
口元は綺麗な弧を描き、大きな瞳はじっ…と私を捉えて離さない。

そんな珍しい表情に見惚れてしまい、目がそらせない。


「…もう、ウソつかなくていいのか?」

「え、っ!?」

「おれのこと、なんとも思ってないってウソ。」

「へ、ぁ、う、ウソって、なんでわかっ…?」

「ん?……知らないのか?…じゃあ、まだひみつ、な。」


シー…と口元に人差し指をあて、小さい子に送るような仕草に、きゅん、と胸がときめく。

なんだかいいように流されてる気が…と疑いの目を持ちつつも、サービスかな…?というくらい遊真くんがいつもより優しい、というか甘くて、流されてしまいそうだ。


「かわいいな、ユキちゃんは。」

「ゆ、遊真くん、ワザトかな…!?」

「ワザト…?なんだか知らんが、ユキちゃんがかわいいのはホントだぞ?最初はおもしろいと思ってたが、がんばりやで、素直で。……あと、恥ずかしそうに照れたあと、嬉しそうに笑うのがかわいい。」


すぅ…っと目を細め、ニヤリとこちらを見つめる遊真くんに、もうお腹いっぱい、限界です…。と叫びたい、と思いつつ、口から出るのは、ぇ。とか、ぁ。とか頼りない言葉の切れ端のみ。


そして、今の今までずっと楽しそうにしていた遊真くんが、ふ、と表情を真剣なものにする。

違う意味でドキリ、と体がこわばった。


「…でもな、…すまん、ユキちゃん。
おれ、ユキちゃんの望む返事は、してやれないよ。」

「…………。」

「さっきの続きになるけど、おれはそのとき、参加していた戦争で死んだはずだった。…けど、親父が黒トリガーになって、おれを助けたんだ。…だけど、それもいつまで続くかわからない。数年後かもしれないし、明日かもしれない。…そんな体で、無責任なことはしたくないんだ。」

「…ゆうま、くん。」


「だから、ごめん。…ユキちゃんの気持ちには、答えてやれない。」



遊真くんはそう言ったきり、下を向いて私と目を合わせようとしない。

きっと、真剣に考えてくれたんだな、って思う。
しょうがないのかな、とも思う。













けど、ごめんね、遊真くん。



「遊真くん。」


両手で手にとったのは、遊真くんの両手。
私より少しだけ大きなそれを、きゅっと包み込む。


「私ね、追いかけることに、慣れたよ。」


ずっと、ずっと。

ただ、あなたに見て欲しくて、それだけで。

本気になれた。努力をした。結果も少しずつ出せた。


それは全部、私の頑張る先に、遊真くんがいたから。



「好きになってほしいなんて、贅沢なこと言わない。…でもね。」


「………。」


「遊真くんのこと、まだ追いかけてても、いい?」


珍しく言葉に詰まる遊真くん。でもね、そんなの関係ないの。だって、わたしは。



「私、まだ、遊真くんを楽しませられてない。遊び相手になれてない。…もっと、もっと!!…遊真くんの人生を、楽しませる存在になりたい!!!」


キラキラと瞳を輝かせているであろう私を、目をぱちくりとさせ、見つめ返す遊真くん。



「そう、なのか。」

「うん!!」


「…そっか。」


きゅっ、と遊真くんに両手を握り返される。
なんだか初めての模擬戦後を思い出すなぁ、と少し顔が赤く染まる。…私、ほんとに単純だ。


「…じゃ、おれのこと、楽しませてみせてよ。…ユキ。」


「…!!…っうん!!私!もっとがんばるからね!!」


その目が、好きだ。楽しそうに、少しイジワルに、相手を見つめるその瞳が、堪らなく好きだ。



その日は、私が遊真くんの肩で眠ってしまうまで、遊真くんとたくさんお話をした。


それは、時刻、23時58分の出来事。


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