ずっと前から好きでした!私と模擬戦してください! | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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18


玉狛支部。屋上の隅っこ。
寒くないように暖かい格好に着替え、手には迅さんが渡してくれた温かいココア。

…もはや、暗躍ってなんだっけ…??


そう考えた私は、先ほど別れたばかりの迅さんとのやりとりを思い出していた。


「よーし、そうと決まれば早速準備するぞ〜!!」

「えっ、暗躍って、今からするんですか!?」

「そうだよ〜。しかもゆきちゃん1人。」

「えええええ絶対ムリです絶対ムリです…!!!」

ブンブンと首を左右に振ると、アハハと笑われる。いや笑い事じゃありませんって…。

「はい!まずゆきちゃんは暖かい格好に着替えてくる!きっとクローゼットに宇佐美がいろいろ入れてくれてるはずだから、借りればいいよ。そしておれは、温かいココアを作ってきます!用意が出来次第、また屋上に集合!はい、解散!あ、12時までには寝れる予定だから大丈夫だぞ〜!」

「は、はい!!わかりまし…た?」

この時点で、かなりおかしいことに気づくべきだった…と後悔の念が蘇ってくる。


「おっ、来たな。寒くない?はいこれ。」

「はい、寒くないです。あ、ありがとうございます…あったかい…ココア?」

「おれからの優しい気づかいでーす。ゆきちゃん、こっちこっち。そうそう、そこでそのまま…。よし、いい感じ。死角になってて誰からも見えないぞ〜!!」

「あ、あの…?」

「じゃ、おれ部屋戻るな。今からゆきちゃんが大好きな遊真がここに来るけど、遊真にバレないようにここにいる。それがゆきちゃんの任務、な。」

「え、ど、どういうことですか…??」

「それは遊真が来てからのお楽しみ〜。……遊真と話したい、って思ったら、いつでも出てきていいよ。」

「???…ま、ますますわかりません…。」

「だいじょうぶ。…ゆきちゃんなら、遊真を今以上に楽しませることができるよ。…おれ、信じてみてもいい?」

「…!!…遊真くんを楽しませることができるなら、がんばります。…迅さんに話したことはないですけど、」


「はは、まあまあ。…じゃ、がんばれ、ゆきちゃん。…素直なキミが一番かわいいよ。…あ、これおれからのアドバイスな。」

「え、っ、ちょ、迅さ…!!」

ギィ…と閉まる扉。私の声は届かなかったみたいだ。


もう、本当になにが起こっているのか、起きようとしてるのか全然わからないし、迅さんが言いたいことなんて、もっとわからないし、今すぐ部屋に戻りたい。…でも、


[ゆきちゃんなら、遊真を今以上に楽しませることができるよ。…おれ、信じてみてもいい?]


(あんなこと言われたら、ここにいるしかないじゃんか…!!)













そして、意外にも早く、そのときは訪れた。


ギィ…と開かれた扉、息を潜めるが、こちらには見向きもしないで、屋上の端の部分、落ちてしまいそうな所に腰を下ろし、空を見上げる遊真くん。

こちらの息づかいも聞こえてしまいそうなほど、静かな夜。


(…何するつもりなんだろ…。)


こんな夜に、こんな場所で。




やがて、その問いに答えるように


遊真くんが、ぽつり、ぽつりと話し出す。



「5勝の壁は厚いな。こっちのトリガーじゃ、まだかげうら先輩やむらかみ先輩には勝ち越せない。…あのとき、……こうして、……ここを…、」


(……私のこと、気づいてないよね?……まるで、誰かに話しかけてるみたい。)

所々聞こえてくるのは、今日の個人戦の反省だろうか、対策だろうか。思わずふんふん、と聞き入ってしまう。いつも寝る前に、ここでこうやって過ごしてるのかな、なんて、垣間見る様子に、胸が熱くなる。


ふ、と止まった声色。シン…と再び静まりかえる屋上に、緊張が戻ってくる。…最早これが暗躍だなんて思ってはいない。多分、私の気持ちを強固にするための、迅さんの言葉遊びだろう。



「…迅さんの言った通りだったな。…ここに残って、正解だ。」


明らかに変わった話の流れに"迅さん"のワード。

ドクン、ドクン、と心臓が速度を増していく。


「最近、楽しいな。…ここにはいろんなやつがいて、目標があって、仲間がいて、……なぁ、レプリカ。……親父は、どれだけ、おれのことを、生かしてくれるかな。」


(………?…なにを、言ってるの?……)

虚空を見つめる遊真くんは、私に気づかない。


「……おれの身体は、あとどれくらいもつかな。…今はそれが少ししんぱ……」


カツン!!!


「……誰だ?」
(……マグカップ、割れなくてよかった。)


中身がないそれは、コロリ、と地面に転がる。それを見つけたのか、コツ、コツ、と足音がどんどんこちらに近づくのが、やけに長く耳に響いた。





目の前は、真っ暗に染まっていく。


(遊真くん、死んじゃうの?)















「…ユキちゃん?」

「…………。」

「おーい、ユキちゃん。こんなとこでどうしたんだ?」


「………の……ぃで……。」


「…ユキちゃんすまん。もっかい言ってく…」



「遊真、くんが…好き、なの……、死なないでくださぃ……っ、」



ポロポロと溢れ出す涙は、止まることをしらない。止め方もしらない。流れ出るそれは、地面に染みを作っていく。


それ以外、何を言えばいいのかなんて、わからなかった。


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