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番外03



メールで合格が決まった旨を幼馴染みに知らせた。
返信はすぐ返ってきて、受信したメールには私も合格!と短い知らせ。
別れの時がきたと思った。
現実に起こると無性に会いたくなったが京都にいる今それも叶わず、無意識に発信ボタンを押していた。
メールを返せばいい話だろう。
何をしているんだ、俺は。
もしもしと受話器から聞こえてくるなまえの声にはっと我に返った。

「合格おめでとう」

とりあえず賛辞の言葉を送る。
そうだ、きっとメールより電話の方が早いと無意識に判断したんだ。
そうに違いない。
わざわざ通話する理由が他にない。

『征十郎も、おめでとう』

まさか祝われるとは思っていなかった。
スカウトされた身であるし、落ちるとも思っていなかった。
合格の二文字しか予想していなかったから、受かるのが当たり前だと思っていたのだ。
それをなまえは一言で覆す。
思わずふっと小さく笑みを浮かべた。

「ありがとう」

『わざわざ電話しなくてもメール返してくれたらいいのに』

つい先刻自分でも思った疑問だ。
自分でも思うのだから相手がそう思ってもなんら不思議な事ではない。

「なんとなく、電話しようと思ったんだ。メールより早いしね」

そう、ただの気紛れだ。
自分を納得させた結論を伝えると、ふふっとなまえが笑う。
素直に、とはいかないだろうが、どうやら納得したようだ。

『楽しみだね、高校生活』

本当に楽しみなようで、明るく弾んだ声でなまえが言う。
前回言った事を訂正しよう。
俺の幼馴染みは、どうやら表情のみならず声でも感情が分かりやすいようだ。
なまえらしい笑い方だった。

幼馴染みの事はこんなに分かるのに、自分の気持ちは未だ分かる事はなかった。
会いたいと思った理由が、分からない。