novels | ナノ

12


赤司が東京を去ってから数日。
今日は私が出発する日だ。
天気は快晴、出だしは良好。
お気に入りのバッグと少量の荷物が入った赤いキャリーケースを持って電車に乗った。
窓から見える景色をぼんやりと眺める。
まだ15年しか過ごしていない人生だが、なんだか色々あったように感じる。
本当に、色々あった。

泣いて
笑って
怒って
拗ねて
照れて
喜んで
そして、好きになって。

思い出は数えきれない。
流れる風景がひどく懐かしく感じて、一粒、涙が静かに流れた。
好きだった。
大好きだった。
どうしようもなく好きだった。
こんなに人を好きになれるんだと知った。
教えてくれたのは、焦がれてやまない幼馴染みだ。

育った街にありがとうと小さく呟いた。
私に関わった全てにありがとう。
帰ってきたら心を込めてただいまを言いたい。

これで本当に終わった。
初めての恋は破れる結果になったので、次にする恋はハッピーエンドにしたい。

さようなら、幼馴染み。
さようなら、好きだった人。
さようなら、初恋。


【終】