03
プライベートで会う事があまりない赤司とは、校内でもあまり会う事がない。
同じ学校に通っていても、クラスが違うだけで全くといっていいほど顔を合わせないものだ。
それでも有名人な彼の噂はよく耳にするので、名前だけはよく聞く。
テスト順位が発表された時、バスケの試合があった翌日、友人関係。
赤司に関する話題は尽きない。
それをいちいち私に確認してくる女子を煩わしく感じる。
なぜ私に聞きに来るのか。
皆が私の元へ持ってくる赤司の話は私の知らない事ばかりだ。
幼馴染みなら何でも知っていると思ったら大間違いだし偏見も甚だしい。
真実を確かめたいのなら私ではなくて本人にするべきだ。
それが褒め言葉であるなら尚更だ。
賞賛の言葉を貰うのなら、赤司だって喜ぶだろう。
「赤司君また学年トップだったね。凄いなぁ」
またか。内心溜息を吐いた。
これがもう三年目。皆飽きるという単語を知らないのだろうか。
受験生だというのに、それではいけないだろう。
「ふぅん、そうなんだ」
私はいつも素っ気なく返す。
自分の事で精一杯な私には、人様の成績を気にしている余裕などないもので。
大体赤司が一位以外を取った事がないのは周知の事実なのだから、同じ感想を改めて言わなくてもいいと思うのは私だけか。
「もう、みょうじさん知らなかったの?幼馴染みなのに」
頬を膨らませてクラスメイトは言う。
くだらない。だからなんだというのだ。
私にとって幼馴染みという関係は柵でしかない。
「言ったでしょ?幼馴染みなんてたいしたものじゃないって」
「言ってたけど…でも話したりするんでしょ?」
「私が征十郎と話してるとこ、見た事ある?」
私の記憶が正しければ、赤司と校内で話したのは偶然廊下ですれ違った時に交わす挨拶くらいだ。
前にも言った通り、他の生徒と何も変わらない。
特に話す事がある訳でもないし、話題があってもわざわざ赤司に話すような事でもない。
「そういえば、全然ないかも…」
「ほら、だからたいしたもんじゃないってば」
そんなもんなんだ、と残念そうに言うクラスメイトを見てズキッと胸が痛んだ。
本当に残念だ。
もっといいものならよかったのに。
校内には私の知らない赤司が沢山いる。
幼い頃はあんなに近くに感じていたのに、今はなんだか遠く感じる。
彼と私の距離。
近かった幼馴染みの背中が、遠い。