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Marshmallow panic



黒子のバスケ、赤司


まさかバレンタインデーに邪魔が入るとは思わなかった。
しかも聞けば、小太郎の口に入ってしまった僕のチョコは手作りだったそうだ。

僕のなまえの手作りを食べるなんて、頭が高いな

なまえのドジのせいとはいえ、きちんと小太郎には制裁を下しておいた。
ついでに連帯責任ということで部員全員に通常の5倍の練習をさせたことをなまえは知らないし、知らなくてもいいことだ。

さて、いつ渡そうか…

僕の鞄の中には綺麗に包装された菓子が入っている。
中身はピンクのマシュマロ。
女の子らしい見た目になまえを連想し、すぐに購入を決めた。

ああ、反応が楽しみだ

喜んで笑うだろうか。
喜んで泣いてしまうだろうか。
前者でも後者だとしても、なまえが喜ぶことに違いない。

「征十郎、ご飯食べよ?」

「ああ」

そうだ、今にしよう

僕は弁当の包みと一緒にもうひとつ隠し持ってからなまえと一緒に屋上に向かった。

「わあっ!いい天気だねー!」

「そうだな」

屋上は誰もおらず、これなら邪魔は入らない。
僕は頬を緩ませながらなまえの隣に座る。

「なんか今日の征十郎は機嫌良いね!何かあったの?」

「いや、いつも通りだ」

何も知らずにこにこ笑う姿が可愛くて仕方がない。
風に遊ばれるさらさらとした髪をなまえが困ったように耳にかける。
その一連の動作を眺めていれば、いつの間にか昼食を終えていた。

さて、そろそろいいかな

無邪気に笑うなまえの頬を包み、何も前触れもなく口付ける。
唇を離せば恥ずかしそうに頬を染めていた。

「ここ、学校だよ…」

「誰も見ていないから構わないだろう?」

「そっ、そうじゃなくて!」

狼狽えるなまえをそっと抱き寄せる。
それから僕より小さな手にあの包みを置いた。

「こっ、これ!」

「僕の気持ちだよ、受け止ってくれるよね?」

なまえの瞳から涙が溢れていく。
どうやら、後者だったらしい。

「ありがとう、征十郎!…開けてもいい?」

「ああ、勿論」

包みを丁寧に外し、箱を開ける。
すると、僕が選んだピンクのマシュマロが顔を出した。

「わあっ!可愛い!」

嬉しそうに笑う姿に、僕も自然と頬が緩んでいく。
幸せなひと時とはこのことを言うのだろう。



Marshmallow panic

実はマシュマロの影に隠れてイヤリングが入っていることを彼女はまだ知らない

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「うさぎの絵本」Luca様より、素敵なお返しを頂きました。
以前頂いたバレンタインのお話と対になっていますので、そちらも是非。
2014年ホワイトデー。