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息抜きにLove you



レオのレッスンは主に国の歴史である。
自国のみに終わらず関係を結んでいる他国にも着手して学んでいるが、史実を知り情勢を知ったところで経済に携わるには言語を理解しなければ社交は成り立たない。
よって語学を交えてのレッスンが行われる。
本日の講義はそれであるのだが、出題された問いをなかなか読み解けずなまえは苦戦していた。
レッスンは大抵が教授するレオの私室を講義の場として使用する。
官僚であるレオが仕事で籠る事の多い執務室を利用する日もあるが、今日は私室に招かれていた。
執務室に劣らないほどの本が部屋の大半を占めているため、息抜きにと顔を上げたなまえの目に入るのは文字だらけで全く気が休まらない。
溜息を吐いてくったりと机に身を預けたなまえの姿に、活字を追っていたレオが気付いてくすりと笑みを零した。
なまえが問題と向き合っている間に相手にしていた本を閉じ、座り直したレオが名を呼びながら彼女の髪を撫でる。
難しく考えすぎなのだとレオは言った。
実際、数日前に教えた時は多少つっかえるといえど解読出来ていた。
そこに応用を加えて長文読解をさせるのが今日の目的だ。
この問題をクリア出来れば、復習を欠かせなくとも語学に心配はなくなるだろう。
次は会話が可能になるよう学ばなければならないが、とりあえず今はこれで充分だとレオは判断していた。
必要が出来ればジルからの連絡があるはずなので、それまでは急ぐ事もない。
うぅ、と唸りながら机に突っ伏した顔をそろそろと上げたなまえが髪を撫でられた事で視界にレオを入れる。
笑みを零したレオは変わらず楽しげに笑顔を浮かべていて、馬鹿にされたのだと思い込んだなまえはぷくっと頬を膨らませた。
それを見たレオがまた笑うものだからなまえの機嫌は低下していく一方だ。
むすっとしてレオを睨み付けるが、された本人は気にも留めずにくすくすと声を漏らし続けていた。

ごめんと謝罪を述べたレオが慣れた様子でインクを付けたペンを手に持つ。
目の前に置かれた用紙にさらさらと書き込んでいくのを眺めていると、今習っている国の言葉であると気付いたなまえにレオは問いかけた。

「これ、なんて読む?」

紙に書かれたのは一文字。
答えたなまえに次を提示したレオは、同じようにまた一文字綴る。
二文字目でレオの言わんとする事に気付いたなまえが思わず顔を赤らめたが、それにレオは目を細めるばかりで三文字、四文字と手を止めはしなかった。
答えるごとに声が小さくなっていくなまえを見据えたレオは心なしか楽しそうだ。

「じゃあこの四文字続けて読んでみて」

一層赤くなった顔をレオに向けたなまえは必ず言わないといけないのかと目で訴えるが、レオの表情はにっこりと浮かべた笑顔から一切動かない。
つまり、言えと言外に表している。

「……す、」

言わなければ終わらないと意を決して口を開くものの、なまえは初めの一文字しか発せずあちこちに視線を彷徨わせた。
躊躇っている間も言えというレオの顔が変わる事はない。
ぎゅっとドレスのスカートを握り覚悟を決めたなまえは、今度こそ声にして文字を読み上げた。

「すきだよ」

やってのけたが羞恥から正面を向けずに俯くなまえの頭をレオがそっと撫でる。
温かい手に釣られてそっと顔を上げると、先程とは違う柔らかい笑みがなまえを迎えた。
微笑みから溢れ出るレオの想いに、胸が鳴る音が聞こえる。

「よくできました」

声まで優しいレオに励まされて、恥ずかしさよりも喜びが勝ったなまえは綺麗に微笑み返した。
顔に集中した熱はなかなか引いてはくれない。
しかしそれも悪くないと、二人だけのレッスンを続けながら教師と生徒は思ったのだった。
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Tommyさんが描かれたレオがあまりに素敵すぎて書かせていただきました。
本当は眼鏡を使いたかったのに眼鏡の「め」の字もない…
ずっと書こう書こうと思っていたイラストだったのでやっと書けて嬉しいです。
他にもTommyさんのイラストで書きたいものが沢山あるので、ゆっくりだけど書いていけたらいいな!
私の妄想が多分に含まれた設定で書いたので、その辺りは二次創作のご都合だとご理解ください。
すんごい短くてすみません。。。