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12



久しぶりに幼馴染みからメールが届いてから数日が経って、また新学期が始まったと思ったら終業式が終わって春休み。
春休みが終われば進級して二年生となる。
一年生最後の長期休暇だ。
礼のごとくアルバイト三昧の日々なのだが、気付けば溜息を吐いていて、それに気付いてまた溜息を一つ。
困った事がある。
年明けに届いた幼馴染みからの久しぶりのメールを目にしてから、溜息が止まらないのだ。
どうにかなると思っていた前向きな気持ちが萎んでいた。
諦めきれなくて困っている。
好きという気持ちは抑えられるものではないのだろうか。
このまま一生幼馴染みに会う事のないまま過ごした方がいいのかもしれない。
そうでもしないと、この想いは薄れる事も風化する事もなく生き続ける気がした。
なんて強情な感情なのだろう。
ちっとも思い通りにいかない。

「何かあった?」

「いいえ、何もありませんよ」

デジャヴを感じた。
以前もこうして帰り道に今と全く同じ会話をした気がする。
春といえどまだ寒いし日没が早い。
マフラーを外して歩く事が私には出来ず、コートまでしっかり着込んでいる。
隣を歩く氷室はマフラーのみ着用していて、寒くはないのかといつも疑問だ。
同じ会話の中で唯一違うのは、そんな服装ぐらいではないだろうか。

「前にも同じ会話をしたね」

「そうでしたっけ?」

数ヶ月は経っている以前の会話を氷室も覚えていたらしい。
とぼける事でこれ以上この話題を続ける事を拒否したが、彼はそれを許してくれないようだ。
前と同じようにはいかないだろうと分かってもいた。
私達は随分親しくなった。
あの頃に比べたら仲が良くなった。
踏み込めなかった領域に入ってこれるようになっている。
無論線引きはしているが、引かれた線は非常に緩まっているとお互い分かっているから、ここで氷室が引き下がる事はないと思った。

「俺じゃ相談相手にはなれない?」

「そんな事はないですよ。ただ、今悩んでいるのはごく個人的な事なんです」

「だから俺には話せない?」

「私の問題ですから」

赤司の話を氷室にして何になる。
これは前にも思った事だ。
大体、この想いを誰かに言うつもりはない。
このまま消化してしまえば何もなかった事に出来る。
氷室の目を真っ直ぐに見て言うと、彼はもう何も言わなかった。