▼ 02(小十郎)
Side:Kojuro
最期の瞬間には、間に合わなかった。
別働隊を率いてた俺が、武田の忍の鴉に呼ばれて駆けつけた時、すでに政宗様は忍の腕の中で眠りについた後だった。
東と西に分断されたこの大戦の中で、敵対する忍からの報せ・・・
罠という考えが微塵も無かったのは、政宗様と刃を交えている相手が真田であると知っていたからだったのだが…
やはり無理を言ってでも、お傍で勝敗を見届けるべきだった。
真田を責めるつもりはねぇ
アイツは真っ向から政宗様に挑み、政宗様はそれに全力で応えた筈。
どちらが勝っても、それが勝負の結果、覆しようもねぇことだ
なれど・・・政宗様、貴方様を失ったこの悲しみは、計り知れないほど大きい。
この小十郎、貴方様の右目として、最期までお供出来なかった事を激しく悔やんでおりまする。
真田との勝負は、納得のいくものになったのでございましょうか。
最期に伝えるべきことは、かの者には伝えられたのでしょうか。
…あの腕の中で最期を迎える事が出来たのは、真田の配慮によるものでありましょうな
この小十郎からも、それについては真田に礼を申さねばなりませぬな
貴方様の、右目としては。
貴方様はきっと、天に昇られた今もなお、高みを目指しておられるのではありませぬか?
魂の輪廻が真であるのならば、この魂もきっと、貴方様と共に輪廻すると信じておりまする。
双竜と称された誉れを、生涯忘れる事はありませぬ。
貴方様を失ったこの抜け殻のような奥州に、再び竜の咆哮が轟くまで・・・
右目は民を守り続ける覚悟にございます。
気まぐれな政宗様のことです、きっと天に飽いたらまたこの奥州の風景を眺めに降りていらっしゃることでしょう?
小十郎に声をお掛け頂くこと、お忘れなさいまするな。
貴方様にお伝えしなければならない事は、山ほど残っているのですから。
聞いておられますか、政宗様。
分かって頂けたのでしたら、早く真田の元へお行きください。
一言、「生きろ」と叱ってやってくださいませ
貴方様の言葉が、必要なのです。政宗様。
もうあと、
あと一言だけでいい。
たった、一度きりで構いませぬ
右目は世を見据えていつまでも待っておりまする
ですからもう一度だけ、
その凛とした隻眼を開いてはくれませぬか
そのお声を、もう一度だけ、お聞かせいただけませぬか
もう・・・
あと一度だけで、良いのですから・・・
To be continued...