Long | ナノ

 01(幸村)

Side:Yukimura



宿命とは真、俺に課せられた試練のようなものであるな、佐助。
あの方の好敵手として刃を交え、こうして決着した今もなお、俺には多大な責任が残っているように思えるのだ。


政宗殿との勝負には、他の武将とのそれとは違う何かを、いつも感じておった。
澱みの無い、純粋な力と力のぶつかり合い。
佐助、お前ならば分かってくれよう、この胸の高鳴りを。


邪魔が入ったとて、十分すぎる程の覇気と闘志に、次にまみえる事を一層強くおもわせてくれる
そのような相手はこれまで…そしてこれからも、おそらく政宗殿をおいて他におらぬのであろうな



そうは、思わぬか?



政宗殿は俺の事を、政宗殿の『ごおる』?と申しておった
目指す高みに居るのが宿敵・・・それは俺も同じ事
ならば、勝敗を決した今、俺にとってのそれはどこへ向かうのであろうか・・・。
いくら思案を巡らせども、やはり浮かぶ名は独眼竜・伊達政宗、ただ一人…!


しかし、俺は自らの手で政宗殿の御命を頂戴、したのだ・・・

互いに望んだ決闘ではあった。
互いに覚悟も決めておった。
それは確かだ。

確か、だった筈なのだ・・・

なのにどうだ、この、果てなき闇に放り込まれたような絶望を感じる胸の内。
俺は自分が分からぬ。

本気でぶつかって散るが本望と思っておったはずだというのに・・・!
佐助、俺を臆病者と思うのなら、そう罵ってくれて構わぬ。
俺は、政宗殿の命を抱えるに値する器なのであろうか・・・不安で仕方がないのだ。

お前からも、片倉殿からも、そしてこの日ノ本からも、俺は政宗殿を奪ってしまった。
佐助、お前にこんな事を話すべきではないとは分かっている。
酷な事を聞かせていると。
しかし、お前にしか、話せぬのだ、佐助
決して許さなくても良い。しかしどうかわかってくれ。



最期の言葉は聴けたのか?

見送る言葉は言えたのか?

触れる温かみを覚えておくことは出来たのか?

追わぬ覚悟は、出来たのか?



佐助、どれだけ殴っても構わぬ。


俺は
俺は、後悔しておる

政宗殿と、生きて切磋琢磨し合う道を選ばなかった事を、後悔しておる。
お前を孤独に、引きずり戻してしまった事を。

そして、お前を俺の前で存分に泣かせてやれぬ、己の器の小ささを、憎んでおる。

こんな事を政宗殿が耳にしたとなれば、即座に斬り伏せられるであろうな・・・
俺はそれを望んでいるのやもしれぬ


なんと身勝手なことだ。
生きて贖う覚悟もない・・・俺は政宗殿に、生き様で負けたのだな。



そうは思わぬか、佐助…?









To be continued...





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -